金融関係者が毎年公表を待ちわびるレポートがある。監督官庁である金融庁が行政における1年間の進捗や実績をまとめる「金融レポート」だ。そこで示される“ご当局”の問題意識を解読しようと金融関係者は読みあさるのだが、その中で今年初めて、貸し剥がしによる決算の数字づくり疑惑が言及される見通しだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

 5割超の地方銀行がすでに実質赤字に陥っているという厳しい現状分析。そして、その中で地銀が取った苦肉の利益確保策に対する警告──。

金融庁が地銀の「貸し剥がしで決算“お化粧”」に厳重警告金融庁が事務年度の初めに打ち出す「金融行政方針」に対して、その進捗と実績をまとめたものが「金融レポート」。PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを意識した一対の資料となっている Photo by Takahisa Suzuki

 本誌が入手した最新版「金融レポート」案には、地銀関係者が目を覆いたくなるような内容が並んでいる。

 金融レポートとは、金融庁が金融行政における1年間の進捗や実績を公表する資料のこと。読めば監督官庁である金融庁の考えがうかがい知れるとあって、金融関係者の注目度は高い。中でも、地銀のパートは毎年、金融業界のみならず世間をにぎわせてきた。

 金融庁は地銀に対して、「今のビジネスモデルでは将来立ち行かなくなる」と何年も警告し続けてきた。その金融庁が危機感を抱く理由である、厳しい現状分析と未来予測が盛り込まれるのが地銀のパートなのだ。

 本稿執筆の9月19日時点では未公表だが、金融レポートの最新版が9月中にも公表される。冒頭の内容は、その案段階からの抜粋だ。

 詳細について、収益の現状分析から見ていこう。ここには、日本銀行の金融緩和策による超低金利環境が続き、収益悪化が止まらない地銀の実態が描かれている。