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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第2回】 2011年10月17日
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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

「イエスかノーか」を即座に表明しなければならない現代
かつて私たちが尊重してきた多様な価値観が排除されつつある

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態度をはっきりさせることはいいことだが、すべての物事に白黒つけようという発想は危険が伴う。「どちらかと言えば好き」「おおむね賛成」といった意見が抹殺されてしまうからだ。二者択一はわかりやすさ、歯切れ良さがあるが、2つの意見に集約されることから、社会の多様性を失われてしまうおそれがある。

現代は「二分思考」が強く求められている

 今回は、もうひとつの「ほどほど」について考えてみたいと思います。

 前回お話ししたように、現代は二分思考をする人が急増しています。二分思考とは、物事の全体像を見ずに「100か0か」「白か黒か」「○か×か」といった対立する二つの概念のどちらかに極端に偏ってしまうことです。

 私は、こうした考え方の行き過ぎに疑問を感じています。

 自分のこと、他人のこと、世の中の出来事に対し、すぐに「100か0か」「白か黒か」と答えを出さなくていいのではないか。

 曖昧なまま、あるいは「6割ぐらいは納得したけれど、4割ぐらいはちょっと怪しいかもしれない」という宙吊りの状態を受け入れる。

 明確な答えを出せない問題に対し、ためらいつつも考え続ける、迷いながらも心に抱え続けるという姿勢でもいいのではないかと思っているのです。

 かつては、優柔不断とも思える態度を認める風潮がありました。

 私が小学校時代に体験した些細な事例です。先生に問題を出されたとき、わかる人は手を挙げ、わからない人は手を挙げないのが一般的です。でも私の担任は、その中間の態度を認めてくれました。

 「半分ぐらいわかっているけれど、半分ぐらいはまだ自信が持てない人」

 「まったくわからない問題ではないので、もう少し考えたい人」

 そういう生徒は、半分ぐらいの高さまで手を挙げるように言われました。人に言うと、同じような体験をした人もかなりいるので、その先生だけが特殊だというわけではないようです。

 いまは違います。二分思考が正しく、曖昧な態度が認められるケースはほとんどありません。現代社会では「正しいと思うものを、瞬間的にはっきりと選択する」態度が強く求められているような気がしてなりません。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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