選挙戦本番を前に
ネットにあふれる罵り合い

総選挙でネットとマスコミのどちらを信じても報われない理由シニア層はマスメディアの論調を信じる傾向があり、ミドル〜若年層はネットで情報を収集する傾向がある。しかし、どちらを信じても、正しい結論には至りにくい理由はどこにあるのだろうか? Photo:Reuters/AFLO

 衆議院選挙の公示が行われ、選挙戦が始まった。前原誠司氏が代表に就任した民進党が候補者を擁立せずに希望の党への合流を図ったが、その一方で、政治信条を異にする枝野幸男氏らが新たに立憲民主党を立ち上げた。その他、公明、共産、維新らが候補者を立てている。

 政策論争はこれから本格的に行われるが、それらの分析はさまざまなメディアですでに行われている。ここで筆者が抱くのは、それぞれのメディアの分析がかなり「偏っている」点だ。右にしても左にしても「偏り感」が大きい印象を受ける。

 当然ながら、ネットではそれらメディアに対する反対意見が多く登場する。右寄りの分析には左派が噛みつき、左寄りの分析には右派が噛みつく。ネットなので、掲示板やツイッターでは、論争が起こることが多いが、大抵の場合は罵り合いに陥って炎上して終わりである。残念ながら生産的な議論を見かけることはまずない。

 そんな中では、お互いへの理解、あるいは新しい見方(アウフヘーベン)など望むべくもない。コメントの応酬と炎上を延々と繰り返すだけになる。

 なぜそうなるのか。心理学的にいえば多くの場合、それは「状況の認知」が異なるからだ。

 例えば、「北朝鮮が日本に脅威を与えている」という認知があれば「それを防衛する政策」を支持するのは自然なことだろう。だが「北朝鮮脅威論は政権のでっち上げだ」という認知を持っていれば、防衛政策を支持する理由はない。

 つまり、異なる政党や政策を支持する人々の多くは、現状に対する認知がまるで違うためにそうなるのだ。