人生2回も強制捜査を受ける

 ある時、人生で2回も捜査当局の強制捜査を受けたのは、江上さんぐらいのものじゃないですかと記者に言われたことがある。

 1回目は1997年の第一勧銀総会屋事件、2回目は2010年の日本振興銀行検査忌避事件だ。両事件とも逮捕者や自殺者を出し、世間を大きく騒がせた。

 私は、両事件の収拾に主体的に取り組んだが、それは文字通り命がけだった。毎日、行くところどこでも、自宅も会社も記者に囲まれた。問題の把握に努めたが、なかなかうまくいかない。先が見えない。頭がおかしくなり、本当に死ぬかと思った。運が悪いなと何度も嘆いた。しかし、なんとか向こう岸に辿りつこうと必死で船をこぎ続けた。

 振り返って見ると、開き直るわけじゃないけど、並みじゃない凄まじい人生だなと思う。

 最近、ある大手企業の社員からイベントのコメンテーターに呼ばれた。なぜ私を選んだのかと彼らに聞いた。すると、「江上さんは修羅場を生きてこられたにもかかわらず明るいですからね。私たち、今、閉塞感があるんです。それをガツンと打ち破るような話をしてください」と彼らは言った。

 イベントは、幸いにもビジネスマンで満員御礼だった。彼らの期待に応えたコメントが出来たかどうかは疑わしいが、私の人生経験が現役のビジネスマンのお役に立てたことは嬉しかった。

 他人から見れば凄まじい修羅場人生だが、見方を変えれば愚か者に過ぎない。しかし、自信を持って言えるのは、誰にも恥じない生き方をしてきたことだ。