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逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

其の3「君命に受けざる所あり」(孫子)
上司に逆らうときの決意と作法

江上 剛 [作家]
【第3回】 2011年12月6日
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注水中止命令を無視した男

 先月下旬、東京電力福島第1原発の事故発生以来、陣頭指揮を執ってきた、所長の吉田昌郎氏が、急きょ入院し、退任することになったというニュースが流れた。

 吉田氏は、事故発生当初、菅直人前首相や東京電力首脳陣の原発への注水中止命令を無視して、注水を続けたことで男を上げた。

 豪快な性格の人物で、部下と共に一緒に事故現場で暮らし、陣頭指揮に当たり、この人がいたから事故を起こした原発が、なんとか冷温停止に向っていると言われている。最悪の原発事故の中でただ一人、国民の支持が集まっている人物と言っても過言ではないだろう。

 しかし、注水継続を報告していなかったので、国会で菅首相を巻き込んでの大騒ぎとなった。

 菅前首相は、国会で野党から注水中止命令について追及され、注水中止を命じた、命じていないと目もうつろな言い訳に終始し、男を下げた。また東電首脳陣、原子力安全委員会も注水中止命令が事態を悪化させたのではないかと追及され、進退これきわまる状態になっていた。そうしたら突然、東電は「吉田所長が独断で注水を継続していた」と発表したものだから、国民全体が「あれ?」と思った。

 結果として現場を熟知した吉田所長の判断が正しかったということになり、吉田所長は一躍、英雄となった。東電が命令を聞かなかった吉田所長を処分したのかどうかは知らないが、菅前首相は、「吉田所長の判断は正しかった」と、彼の行為を追認することになった。

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江上 剛 [作家]

えがみ ごう/1954年1月7日兵庫県生まれ。本名小畠晴喜(こはた はるき)。77年3月早稲田大学政経学部卒業。同年4月旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。高田馬場、築地などの支店長を歴任後、2003年3月同行退行。1997年に起きた第一勧銀総会屋利益供与事件では、広報部次長として混乱収拾に尽力する。『呪縛 金融腐蝕列島』(高杉良作・角川書店)の小説やそれを原作とする映画のモデルとなる。2002年『非情銀行』(新潮社)で作家デビュー。以後、作家に専念するも10年7月日本振興銀行の社長に就任し、本邦初のペイオフを適用される。


逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―

作家・江上剛氏は、その人生で2回も当局による強制捜査を経験した。その逆境にあって、心を支えくれたのが、「聖書」「論語」「孫子」などの古典の言葉である。ビジネス界に身を置けば、さまざまな逆風にされされることも多い。どんな逆境にあっても、明るく前向きに生きる江上剛氏が、柔術ならぬ“剛術”で古典を読み解き、勇気と元気の“素”を贈る。

「逆境を吹っ飛ばす江上“剛術”―古典に学ぶ処世訓―」

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