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任天堂はなぜソーシャルゲームをやらないのか(下)
ユーザーに自己効力感を促す制作方針の気骨と強み

石島照代 [ジャーナリスト]
【第25回】 2012年1月10日
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 こんなことを言う専務がいる会社が、果たして価格差別戦略と段階的要請法に支えられた、自尊感情補完ビジネスとしてのソーシャルゲームをつくるだろうか? とてもそうは思えない。

『スーパーマリオ』をやって噛み締める
「努力は報われる」という幻想も悪くない

 ちなみに筆者は、昨年の11月に『スーパーマリオ3Dランド』を買った。できもしないのに買ってもムダとも思ったのだが、家電量販店の売り場で「さあ、もう1回」という宮本専務の声が聞こえたらしく、気づいたときにはレジでお金を払っていた。

 このゲームのいいところは、筆者のような下手な人間でも、「ああ、マリオってこういうゲームだったのね」と楽しめるところである。時折、白のタヌキマリオ(できない人に対する救済手段としての無敵状態)になりながらも、なんとステージ7-3まで来た。自己記録更新で、新年早々気分がよくなる。

 確かに、松本早大教授の指摘通り、努力がいつも実る世の中に私たちは住んでいないが、ゲームの中くらいは「努力は報われる」という幻想に浸っても、悪くはないと思うのである。

●取材対象者プロフィール
松本芳之(まつもと・よしゆき)/1951年生まれ。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。早稲田大学大学院 文学研究科心理学専攻 博士課程満期退学。専門は社会心理学(対人交渉)。
 
●引用文献
中野一気/『急増する「若年生活保護者」のリアル』(『週刊プレイボーイ』46号、2011年、集英社) 
野島美保/『人はなぜ形のないものを買うのか』(2008年、NTT出版) 
石島照代/『ゲーム業界の歩き方』(2009年、ダイヤモンド社)
 
●謝辞
今回の原稿では、普段以上に多数の業界関係者にご尽力を賜りました。また小山友介・芝浦工大准教授には、プロット段階からご協力いただき、松本芳之・早大教授には、コメントだけでなく、原稿中で紹介した共分散構造分析の説明方法についてもご指導いただきました。この場を借りて、御礼を申し上げます。


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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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