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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第15回】 2012年1月30日
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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

テレビの前で議論しても残る
橋下市政への違和感

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変化を訴える前に、目指すべき社会像を語るべき

 もちろん、「このままの社会でいい」とは、今日本にいるほとんどの人が思っていないでしょう。私もです。とはいえ、既存のシステムを壊した後に、どのような社会ができ上がるのか、市民としては気になるのは当然のことではないでしょうか。

 「では、現状のままでいいのですか」と言われ、「いや、そうは思わない」と答えると、「じゃ、代案を示してくださいよ」とさらに言われます。しかし、精神科医である私にそんなことができるはずもないし、その権利もありません。

 私は、「改革はすべてダメ」と言いたいわけではなく、「改革の先の社会の基本的な軸を示してほしい」と言っているのです。それは、公務員が何人減るとか、塾に行くクーポンが何枚配られるとか、そういうことではありません。「とにかく競争力ありき、実力者だけが生き残れる社会」なのか、「みんなで痛みを分け合ってでも誰もが安心して暮らせる社会」なのか、そういったことです。

 なぜ、そんなことをしつこく聞くのか。それは、橋下氏が弁護士時代、テレビ番組で何度かはっきりと、「自分は改憲論者で核武装論者」と語っていたのを記憶しているからです。そのような発言をする方をリーダーと仰ぎ、そこで行われるグレート・リセットの先には、たとえば「核武装する日本」が待っているのか、とつい想像してしまったとしても、「それはおかしいですよ」と言われる理由はないと思います。

 しかし、その点については、橋下氏は「あれはあくまで個人としての見解で」とはっきり答えてはくれませんでした。

 「昔はそう思っていたけれど、実際に権力の座についた今は変わった」というなら、はっきりそう言ってほしい。もちろん、「そうです。維新の会から国政に大勢の議員を送り込んだら、そのときこそ憲法改正、核保有です」というなら、それもはっきりさせてほしい。

 橋下氏の唱える各論には、私も賛成する部分がいくつかあります。とくにエネルギー問題では、関西電力に、発電部門と送電部門を分ける「発送電分離」を果敢に要求するなど、脱原発依存を打ち出している。ただ、せっかく脱原発なのに、脱核兵器ではないとしたら、その姿勢には疑問を感じずにいられません。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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