先行き不透明で、どこにリスクが潜んでいるかわからない――。そんな不確実な社会の中で、自分のキャリアをどうつくっていけばいいのでしょうか。特に若い人の間では転職が一般化している今日この頃では、キャリアを考える大前提として、まずは転職市場の実態を知ることが重要です。

あなたも「転職神話」に踊らされている!?

 不確実な社会で生き抜くため、危機感を持って自分のキャリアをアップさせようとする意気込みは立派だと思います。でも、その焦りから、あなたが「転職神話」に踊られているとしたらどうでしょうか?

 メディアが報道する転職は、必ずしも実態を正しくとらえていない面があります。その結果、「転職をしなければ、自分のキャリアは飛躍しない」と思い込んでしまう場合があります。その反対に、「転職なんて、会社になじめない人の逃げ道さ」と決めつけてしまうこともあるでしょう。

 まさに「転職神話」そのものです。こうしたイメージを持ったままでは、いつまでたっても「なんとなく」転職神話に踊らされることになりかねません。筆者は大勢の転職市場のプロたちから話を聞いてきましたが、そこで耳にした実態は転職神話とは大きく異なるものでした。

 転職するか、会社に残るか――決断するときは誰でも迷って当たり前です。しかし転職市場の実態を知らなければ、神話を信じて「なんとなく」転職しかねません。まずは、その実態を知ることから始めましょう。

若い人の間では転職は一般化。しかし、賃金が上がるとは限らない

 日本の場合、欧米とは違って転職市場はそれほど活発ではなく、新卒採用後、ずっと同じ会社にいる人の割合が多いと信じられてきました。しかし、株式会社リクルートと株式会社リクルートエージェントが2009年12月に実施した第6回転職市場定点観測調査では、「29~33歳までにエンジニア以外のすべての職種で生え抜き比率は5割を割っている。つまり30代前半において、転職未経験者はマイナーな存在になっている」と報告されています。

 一方、賃金についてですが、もともと40代以上の年齢層では転職を取り巻く環境は厳しく、賃金は上がりにくいということはよく知られていると思います。しかし厚生労働省の雇用動向調査によれば、30代の転職ですら賃金が下がる比率のほうが多いのです。20代では、さすがに賃金が上がる比率のほうが大きいのですが、それも3割強にすぎないのです。ここから、転職をすることが必ずしも賃金のアップにつながるものではないことがわかります。