「やはり新たな日本を造る時期が来ています。いや、ここに至る前にもっと真剣に考えるべきでした。国民の意識を一変して、平成維新を成し遂げる時期に来ています」

 今度は、殿塚が意志を込めた強い口調で繰り返した。

「しかし首都が東京にある限り、日本は過去から抜け出せない。新しく出発するためには、カンフル剤が必要です」

「それが首都移転ですか」

「我々は、日本は新しい形で再出発しなければ未来はないと信じている。そしてそのための遷都であり道州制だ」

 議員の1人が、森嶋に迫るように言った。

 森嶋は考え込んでいる。何と答えていいか分からなかったのだ。

「現在の都道府県は幕末276藩から廃藩置県で3府302県、そこから順次統合しただけにすぎません。それから幾多の戦争、敗戦を経て、新生日本となってすでに60年以上がすぎています。日本も一時は世界第2位の経済大国にもなりました。そろそろ、時代に合った日本の形に変えるべきだとは思いませんか」

 葉山が森嶋を見つめて問いかけてくる。

 やはり、森嶋は答えることが出来ない。頭の中では思い描き、論文にまとめたこともあったが、こうして議員たちに囲まれて議論するとは考えてもみなかったことなのだ。

「現在の日本は東京一極主義、東京という一都市が一つの国家並みの経済を生み出し、それに名古屋、大阪が続いています。地方は一部の大都市に支えられながら、その周辺で生きているにすぎません。これでは発展は望めない。しかるべき地域に統合して、各々が真剣に生き残る方法を模索すべき時に来ています」

 葉山はさらに繰り返した。

「日本を組み直して世界と対抗出来る国に造り直さねば、日本に未来はありません」

 葉山は穏やかだか強い意志の籠った声で話した。