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連載経済小説 東京崩壊
【第34回】 2012年6月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
高嶋哲夫 [作家]

2人の男

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第3章

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 帰りの車の中で森嶋は気が重かった。

 2段階の降格でも世界では大きな波紋を呼ぶに違いない。投機ファンドは、この機会を見逃さないだろう。それが一気に3段階ともなれば、為替にも株価にも大きな影響を与える。そして、国債にも影響が及ぶかも知れない。

 「有益な時間だったか」

 黙り込んでいる森嶋にロバートが話しかけてくる。

 「相手の意図は分かったが、我々の言い分を聞いて、意思を変える気はないらしい」

 「彼を説得するために会わせたんじゃない。お前に紹介しておきたかったんだ。いずれ必ずまた会うことになる。どんな時にも裏口は開けておけということだ」

 森嶋にはロバートの言葉の意味がはかりかねた。ただ、日本の一官僚としても、この出会いは意義があるように思えた。いや、そうしなければならない。さもなければこの国は──。

 「感謝してるよ」

 森嶋はぽつりと言った。

 ふと眼を北に移すと、陽を浴びてそびえる富士山の姿が目に入った。右手には冬の光に輝く太平洋が広がっている。不思議な感動が森嶋の心に湧き上がってきた。この美しい国を何としても護らなければならない、と強く思った。

 「これからどうする」

 「大使館に行って電話をしなければならない。国務長官にね。その前に少し遅いが、昼飯を食っていこう。あのホテルの朝食はうまかった。付き合うだろう」

 ロバートらしい笑みを見せたが、どこか疲れを溜めたような顔だ。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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