欧州危機で世界経済が再失速の瀬戸際にある中、中国が矢継ぎ早に景気刺激策を打ち出している。

 5月16日と23日、中国国務院は省エネ家電や省エネ小型車を対象とする363億元の購入補助や、インフラ投資計画の推進などを決定。25日には、一部品目の購入補助実施細則も発表した。また24日には、財政部が公共賃貸住宅建設に660億元、省エネ、環境対策や新興産業育成などで合わせて1700億元を支出することを明らかにした。金融面では、18日に昨年12月来3回目の預金準備率引き下げを行った。

 1~3月期の実質経済成長率は8.1%。2011年10~12月期の8.9%に対し、減速は明らかだ。4、5月の各種指標も総じて芳しくない。前記の刺激策は従来の施策の延長線上のものも多いが、このタイミングでの相次ぐ提示、そして16日の国務院常務会議決定から9日間で細則発表という異例の迅速さは、想定以上の落ち込みへの危機感の表れとみられる。

 減速の要因は、第1に内需の下ブレだ。不動産の価格下落と投資減少、さらにそれが素材業界にまで波及したことや、金融政策が後手に回り中小企業の業況が悪化したことなどが響いた。「中国銀行や中国工商銀行などの四大銀行は、リスクに敏感になり過ぎ貸し渋りに陥った。また前重慶市党委員会書記・薄煕来氏の失脚事件でインフラ投資が混乱した影響もある」(鈴木貴元・みずほ総合研究所中国室上席主任研究員)。

 第2が輸出の不調だ。最大の貿易相手である欧州のみならず、欧州危機の影響で新興国向けが落ち込んでいるのが大きい。さらに、中国の景気減速は巡り巡って欧州からの輸出にも悪影響を与えつつあり、その行方は世界に大きな影響を与える要素となる。