人事評価に対する過剰な期待

 この会社の人事評価制度のどこがおかしかったのでしょうか。

 それは、人事評価をモチベーションアップの仕組みと勘違いしたことです。
(実はこの会社にはもう一つ、個人面接への頼り過ぎという問題もありますが、それは次回以降で説明します)

 人事評価とは人事考課やボーナス査定と呼ばれるものであり、従業員の会社への貢献度の優劣を判定する作業です。
  判定だけではありません。貢献度にもとづいて、賃金や処遇に差が付きます。

 だから、きちんと働いてくれ。働きぶりが良好ならば、ほうび(アメ)を取らす、ダメならば、ペナルティ(ムチ)が待ってるぞ。

 それが人事評価という仕組みです。

 そういう「ムチを伴った動機づけ(ヤル気の喚起)」の仕組みを、働く人々はどのように受けとめるでしょうか。

 おそらく、積極的にアメを獲りに行く人はごく少数の、自他ともに認めるやり手社員だけであり、大多数はムチを避けようとするのではないかと思います。

 もちろん、誰だってアメはほしい。しかし、そのためには、気の遠くなるような努力が待っていて、そんなしんどいことは、できれば避けて通りたい。
  かといって、強烈なムチで叩かれたのではたまらない。なんとか、普通評価は取りたいものだ。

 普通の人はそう考えるのではないでしょうか。

 これは、人事評価が積極的な動機づけ策としては機能せず、ペナルティがもたらす恐怖から逃れるために、恐怖を感じない程度に頑張るという効果しか望めない仕組みだということを意味しています。

 人事評価に、過剰なモチベーションアップの期待を抱くことは禁物なのです。