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連載経済小説 東京崩壊
【第47回】 2012年7月2日
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高嶋哲夫 [作家]

巨大地震迫る

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【前回までのあらすじ】
国家破綻、中国の介入……。ロバートの言葉が脳裏を離れない森嶋は、昼休みに優美子を誘いだした。森嶋は明け方にロバートが来たことと、彼が言った内容を優美子に話した。デフォルトが起こると日本と日本国民はどうなるのかと質問する森嶋。優美子は、銀行は破綻し、企業倒産が倍増、日本中がパニックになるだろうと説明する。その時、森嶋の携帯電話が鳴った。着信画面を見ると行方をくらましていた高脇からだった。高脇は神戸にある京スーパーコンピュータを造った研究所にいるという。そして、明日の正午に重大発表があるので聞くようにと森嶋に告げ電話を切る。
一方、能田総理は首都移転について野党に根回しするため、国会内で殿塚と合う。総理は村津の言葉を思い出しながら、必死に首都移転の必要性を殿塚に話し、協力を要請する。殿塚は自分の責任で自由党内をまとめ、法案の国会通過に協力することを約束する。
夜、森嶋が帰宅しようとすると、理沙が自宅前のコーヒーショップで待ち構えていた。総理が殿塚と会ったという情報を入手し、森嶋に探りを入れにきたのだ。理沙は一方的にあれこれ質問を浴びせる。とそのとき、またもや地震が起こった。森嶋は、総理に会って話しを聞いたほうがいいと理沙に助言する。殿塚の名前を出し、首都移転について新情報があるといえば会ってくれるはずだと。理沙は森嶋に向かってウインクすると、弾むような足取りで店を出ていった。

第3章

19

 

 身体が揺れている。

 わずかに感じるだけだった揺れが突然激しくなり、立っていられない。足元に目を落とすと割れ目が出来ている。暗黒への入口のようなその大地の亀裂は、巨大な口を開けて森嶋を呑み込んでいく。助けてくれ……。声を出そうとしても、音のない息が吐き出されるだけだ。その息も短く消えていく。そして身体が、暗く深い裂け目の中に吸い込まれていく。

 目を覚ますと、ベッドのわきに置いた携帯電話が鳴っている。

 森嶋は腕を伸ばして携帯電話を取った。

〈テレビを見た?〉

 優美子の声が飛び込んでくる。

 「何時だと思ってる」

〈朝の6時前よ。文句を言わずにテレビをつけなさい〉

 森嶋はベッドから抜け出してパソコンを立ち上げ、テレビに切り替えた。

〈どのチャンネルでもいいからニュースを探して〉

 全身に冷気が染み込んでくる。森嶋は身体を震わせながらチャンネルを変えていった。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

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