「グーグルは大げさ」
IBMの批判は正しいのか

QunaSysの楊天任代表(左)と、Jijの山城悠代表(右)QunaSysの楊天任代表(左)と、Jijの山城悠代表(右)。量子コンピューター分野で起業した1994年生まれのヤングリーダーだ Photo by Yoko Akiyoshi

――近年はニュースでも量子コンピューターという言葉を見かけるようになっていましたが、まだ机上の空論だったのですね。そもそも量子コンピューターってどういうものですか。

 量子コンピューターは、量子力学の「重ね合わせ」を利用した計算機です。スパコンのようなこれまでのコンピューターは、ビット(論理素子)が0か1のどちらかの状態で計算します。これに対して量子コンピューターは、量子ビットの0と1を重ねた状態で計算します。そうすると計算する対象によっては、スパコンよりはるかに速く、正しい答えを得られるものがあるのです。

――量子力学を使うというところで、もう分かりません。

 そうですよね。原案の提唱者であるファインマンも、「量子力学を理解できたと思ったなら、それは量子力学を理解できていない証拠だ」と言ったぐらいですから、専門外の人はすぐには理解しにくいと思います。

――米IBMは今回のグーグルの発表に対して、「スパコンで同じ問題が2日半で解けた。グーグルは大げさだ」と批判しています。

山城 これまでのスパコンだと1万年かかる、という点は確かに議論の余地がありそうです。特に今回グーグルが計算する際に使ったアルゴリズムは量子コンピューターに合わせたものなので、逆にスパコンに合わせたアルゴリズムを作れば、もっと違う結果が出る可能性は十分にあります。研究者の間でも、今回の成果で量子超越性が「完全に」達成できた、と考えている人はほとんどいません。これから、スパコンに「やり返される」ターンになると思います。

 ただ1万年か2日半かの議論があったとしても、今回の成果は重要なマイルストーンとしての意味が十分にあります。スパコンが量子コンピューターに勝てなかった、ということ自体に意味があるのです。