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連載経済小説 東京崩壊
【第66回】 2012年8月22日
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高嶋哲夫 [作家]

財務大臣からの依頼

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第4章

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 森嶋は実家に電話して無事であることを伝えたが、怪我をしていることは言わなかった。

 「もう帰っていいんだろ。怪我の処置はすんでるんだから」

 「看護師さんに聞いてくる」

 優美子が病室を出ていってから、高脇に電話した。

〈電話に出ないので心配していた。東京駅周辺は震度6弱のところもあったらしい〉

 冷静な声が聞こえてくる。

 「これが東京直下型地震か」

〈そうには違いないが、本震じゃない。同じようなものが頻度を増して起こり、いずれ本物の出番だ〉

 「よしてくれよ。これで前菜ってわけか。メインデッシュはこれからか」

〈とにかく無事で安心した。俺の家族も研究室のほうも問題なかった。家族を神戸に呼ぶことにしたよ。じゃ、俺は忙しいから〉

 電話は切れた。たしかに、周りからは慌ただしい声が聞こえていた。

 「前菜がどうかしたの。高脇さんでしょ」

 気がつくと横に優美子が立っている。

 「彼は家族を神戸に呼び寄せるつもりだ。東京にはおいておけないらしい」

 「医師に会った。帰ってもいいって。でも、2、3日中に必ず病院に行くこと。早くベッドを空けてもらいたいらしいわ」

 2人は病室を出て、1階に降りた。

 待合室にも廊下にも怪我人が溢れていた。

 テレビの音が聞こえる。

 2人は立ち止まってテレビに視線を向けた。

〈今日午後12時20分、東京湾北部を震源とする地震が発生しました。マグニチュードは5.9。震度は東京駅6弱、新宿5強、渋谷6弱の激しい揺れが襲いました。この地震による死者21名。重軽症者283名。この人数はさらに増えると思われます。池袋と世田谷の火事はまだ続いています。専門家によると、今後、こうした地震が頻繁に起こるようになり、プレートは一気に破壊される可能性があるとのことです〉

 2人は人の間を縫うようにして病院を出た。

 

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高嶋哲夫 [作家]

1949年、岡山県玉野市生まれ。1969年、慶應義塾大学工学部に入学。1973年、同大学院修士課程へ。在学中、通産省(当時)の電子技術総合研究所で核融合研究を行う。1975年、同大学院修了。日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)研究員。1977年、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)へ留学。1981年、帰国。
1990年、『帰国』で第24回北日本文学賞、1994年、『メルトダウン』で第1回小説現代推理新人賞、1999年、『イントゥルーダー』で第16回サントリーミステリー大賞で大賞・読者賞など受賞多数。
日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。全国学習塾協同組合理事。原子力研究開発機構では外部広報委員長を務める。


連載経済小説 東京崩壊

この国に住み続ける限り、巨大地震は必ずくる。もし巨大地震が東京を襲ったら、首都機能は完全に麻痺し、政治と経済がストップ。その損失額は110兆円にもおよび、日本発の世界恐慌にまで至るかもしれない――。今後、日本が取るべき道は何か。その答えを探る連載経済小説。

「連載経済小説 東京崩壊」

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