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岸博幸のクリエイティブ国富論

シリコンバレーでの新しいバブル
~シャープ再生への教訓~

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第198回】 2012年8月31日
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 フェイスブックの株価が公開時の半値にまで下落する中で、ソーシャルメディア・バブルの終焉が言われ出していますが、米国のIT/ネット産業の総本山であるシリコンバレーで新しいバブルとも言えるものが密かに盛り上がりつつあるのをご存知でしょうか?それはハードウェア・バブルです。

ハードウェア・バブルの発生

 シリコンバレーではこの数年の間にハードウェアに関する起業が増え、既に様々な製品を発売しています。例えば、Nestという企業の“スマート・サーモスタット”、Lytroという企業の撮影後に焦点を変えられるカメラ、Pebbleの“スマート・ウォッチ”(スマホと接続できる腕時計)など、たくさんの魅力的なハードウェアが市場に出ています。

 もちろん、これらの企業はシリコンバレーではコンセプト作り、デザイン、プロトタイプ製作、資金調達といった部分だけを行い、実際の製造は新興国を拠点にしているようですが、このようにハードウェアに関する起業の増加に貢献した環境変化としては、3つの点を指摘できます。

 1つ目は、3Dプリンターの普及です。3Dプリンターとは、通常のプリンターのように紙に印刷するのとは異なり、入力されたデータに基づいてプラスチックやシリコンなどの薄い層を何重にも重ね合わせて、立体物をプリントアウトする代物です。

 話は逸れますが、この夏には米国で、3Dプリンターを使って実用性ある拳銃を作ってしまった強者も現れたくらいに、3Dプリンターはものづくりの常識を変えつつあります。

 この3Dプリンターが低価格で利用可能になったことで、ハードウェアの製品のプロトタイプ(試作品)が短期間かつ低コストで作りやすくなったのです。

 2つ目は、ネットの普及による流通ルートの確立です。ネット上にはグーグルのMarketPlaceやアマゾンなど様々な“市場”が存在するので、最新のアイディアを反映したハードウェアをすぐに売れる環境が整っています。

 そして3つ目は、資金調達の多様化です。シリコンバレーで起業する場合、通常はベンチャーキャピタルの出資を受けます。最近のハードウェアの起業でもそのパターンが多いですが、それ以外に、Kickstarterのようなクラウド・ファンディングを活用することにより、ネット上でプロトタイプを公開して資金を調達することが可能になりました。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

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