フェイスブックの株価が公開時の半値にまで下落する中で、ソーシャルメディア・バブルの終焉が言われ出していますが、米国のIT/ネット産業の総本山であるシリコンバレーで新しいバブルとも言えるものが密かに盛り上がりつつあるのをご存知でしょうか?それはハードウェア・バブルです。

ハードウェア・バブルの発生

 シリコンバレーではこの数年の間にハードウェアに関する起業が増え、既に様々な製品を発売しています。例えば、Nestという企業の“スマート・サーモスタット”、Lytroという企業の撮影後に焦点を変えられるカメラ、Pebbleの“スマート・ウォッチ”(スマホと接続できる腕時計)など、たくさんの魅力的なハードウェアが市場に出ています。

 もちろん、これらの企業はシリコンバレーではコンセプト作り、デザイン、プロトタイプ製作、資金調達といった部分だけを行い、実際の製造は新興国を拠点にしているようですが、このようにハードウェアに関する起業の増加に貢献した環境変化としては、3つの点を指摘できます。

 1つ目は、3Dプリンターの普及です。3Dプリンターとは、通常のプリンターのように紙に印刷するのとは異なり、入力されたデータに基づいてプラスチックやシリコンなどの薄い層を何重にも重ね合わせて、立体物をプリントアウトする代物です。

 話は逸れますが、この夏には米国で、3Dプリンターを使って実用性ある拳銃を作ってしまった強者も現れたくらいに、3Dプリンターはものづくりの常識を変えつつあります。

 この3Dプリンターが低価格で利用可能になったことで、ハードウェアの製品のプロトタイプ(試作品)が短期間かつ低コストで作りやすくなったのです。

 2つ目は、ネットの普及による流通ルートの確立です。ネット上にはグーグルのMarketPlaceやアマゾンなど様々な“市場”が存在するので、最新のアイディアを反映したハードウェアをすぐに売れる環境が整っています。

 そして3つ目は、資金調達の多様化です。シリコンバレーで起業する場合、通常はベンチャーキャピタルの出資を受けます。最近のハードウェアの起業でもそのパターンが多いですが、それ以外に、Kickstarterのようなクラウド・ファンディングを活用することにより、ネット上でプロトタイプを公開して資金を調達することが可能になりました。