デザートの果物を食べ終わると、安曇は今日のまとめを始めた。

「経営とは会社を潰さないことだ。そして、経営には会計が不可欠だ。しかし会計数値を鵜呑みにしてはいけない。それは『隠し絵』であり、『だまし絵的』であるからだ。『隠し絵』が見つかれば、数字の裏に潜む本質を的確につかむことができる。『だまし絵』を信じ込むと、とんでもない判断ミスを犯してしまう」

 由紀は一言も聞き漏らすまいと、懸命にメモをとった。

「次回からは、具体的な話をしよう。そして、君は、約束通りここで学んだことを速やかに実行するのだ。1年以内に高田支店長を脱帽させて、君も破産せず、僕も報酬をいただく。これぞウィン・ウィンだ」

 うれしそうに安曇が笑った。

 心地のいい酔いが由紀を包み込んだ。安曇の丸い顔はますます丸くなった。そして、由紀の気持ちは少しだけ晴れた。

解説 損益計算書から読み取れるもの

(1)損益計算書は会社の経営成績を表している

 会社の一定期間の経営成績(業績)を表す決算書を損益計算書と言います。

 業績は売上高と費用を比較して利益(損失)で表されます。人が1年で1歳年を重ねるのと同様、会社も原則として1年間で区切って業績を計算します。もっとも、めまぐるしく変化するこの時代に1年は長すぎます。そこで、財務会計では半期あるいは四半期に一度決算して業績報告することが求められてきました。また、経営者(社長や役員)や管理者(部課長)は、もっと短いスパンで業績をつかむ必要があります。管理会計では通常、1カ月ごとに決算を行います。これを月次決算と言います。