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高橋潔 「脱」ガラパゴス人事

内なる力を引き出す
モチベーションという名の船の旅

高橋 潔 [神戸大学大学院経営学研究科教授]
【第6回】 2012年9月24日
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感じることは動くこと

 7Gold、14Silver、17Bronze。8月12日に閉幕したロンドン五輪では、史上最多の38個のメダルを獲得した日本選手団の活躍に目を見張り、多くの感動をもらった。とりわけ、弱冠23歳にしてキャリア20年のベテラン、「泣き虫愛ちゃん」として知られた福原愛選手が、卓球団体でとうとう銀メダルを獲得し、その頬を伝った嬉し涙はわれわれの心を動かした。

 勝って感涙にむせび、負けて悔し涙を流す。試合の結果次第で、心が大きく揺らされるのが、純粋なスポーツの世界である。だが、おもしろいことに、試合が始まる前に涙するスポーツがある。それはラグビーだ。

 たとえば、早稲田大学ラグビー部では、ロッカールームにお札・塩・米・水を用意し、監督が塩をまいたジャージを、試合開始前に選手1人ひとりに手渡す。「おしこみ」という儀式である。選手は、監督やチームの期待が込められたジャージを手にし、試合に出られない仲間の分も思って号泣し、気持ちを高ぶらせてグラウンドに出ていく。

 なぜ、試合が始まる前に涙するのか? ラグビーはフィジカル・コンタクトがきわめて激しいため、タックルを受けて気を失ったり、大けがをすることがある。その危険をひしひしと感じている選手は、試合の恐怖や不安などを、泣くという行為によって晴らそうとする。すると、試合でも動けるようになる。

 モチベーションの語源は、「動くこと」を意味するラテン語モベーレだが、感情を露わにして泣くことで、心と体の両方が動けるようになる。元ラグビー日本代表 林敏之氏は、「感即動」(感じること即ち動くこと)という言葉で、そのことを言い表している。それほど、モチベーションは感情と結びついているのだ。

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高橋 潔 [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1984年慶應義塾大学文学部卒業、1996年米国ミネソタ大学(University of Minnesota)経営大学院博士課程修了(Ph.D.)。南山大学総合政策学部助教授などを経て、現在,神戸大学大学院経営学研究科教授。専門は産業心理学と組織行動論。経営と人事管理に関連した事象を心理学的なアプローチから研究している。主な著書に『〈先取り志向〉の組織心理学―プロアクティブ行動と組織』(有斐閣・分担執筆)、『人事評価の総合科学―努力と能力と行動の評価』(白桃書房)、『Jリーグの行動科学―リーダーシップとキャリアのための教訓』(白桃書房 編著)など。


高橋潔 「脱」ガラパゴス人事

日本企業の人事制度・人事施策を別の視点から考え直す。それが本連載の目的だ。これまで、長期の雇用と年齢にともなった処遇を旨としてきた日本の組織。それが、グローバル時代に通用しなくなってきた。たとえば、新規学卒者の一括採用、年次によるキャリア管理、処遇に直結しない人事評価、OJT偏重の人材育成、遅い昇進と幅広い異動など。これを象徴的に「ガラパゴス人事」と呼んでみよう。日本の組織で特有に生まれた人事の仕組みについて、ミクロの視点から鋭く切り込んでいく。また、グローバル展開を目指す組織にとって、現状の問題点をあぶりだす目と、変革のための示唆を与えていく。

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