日本の人口は今、何人くらいか、君は知っているかな。2010年の国勢調査を見てみるとだいたい1億2806万人。でも、この人口はこれからどんどん減ってしまうんだって。

国立社会保障・人口問題研究所では、将来の人口について3つの見方で予測を立てている。このうち、「中位推計」――出生や死亡の見込みが中程度と仮定した場合の予測――を見てみると、2030年には1億1522万人、さらに2060年には8674万人となっている。これは、第二次世界大戦直後の人口とほぼ同じ規模だ。

どんどん人口が減り、縮んでいく日本の社会。いったい私たちの行く手には何が待ち受けているんだろう?

――この連載では、高齢になった未来の私たちのため、そしてこれからの時代を担うことになる子どもたちのために、日本の将来をいろいろな角度から考察していきます。子どものいる読者の方もそうでない方も、ぜひ一緒に考えてみてください。

明治大学政治経済学部 教授
加藤久和先生の話

お年寄りは若者より1億2000万円以上も得!?
米国の3倍以上もある日本の「世代間格差」

かとう・ひさかず
1958年東京都生まれ。1981年慶応義塾大学経済学部卒業。1988年筑波大学政策科学研究科修士課程修了。博士(中央大学)。(財)電力中央研究所主任研究員、国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部第一室長などを経て、2006年より明治大学政治経済学部教授。専門は人口経済学、社会保障論、計量経済学。主な著書に『世代間格差――人口減少社会を問いなおす』(筑摩新書)、『財政学講義――政府部門の経済分析』(文眞堂)、『人口経済学入門』(日本評論社、日本人口学会賞受賞)など多数。

――国に払う「社会保障費(しゃかいほしょうひ)」と、年金、医療、介護などを通して自分が受け取る利益の差を見てみると、上の世代ほど有利。日経新聞の調べによると、お年寄り世代は20歳未満の「将来世代」に比べ、1億2000万円以上も得。

――就職を希望する大学生(2012年3月卒業)で、就職先が決まっている人の割合「就職内定率」は、2012年4月現在、93.6%(文部科学省『平成23年度大学等卒業者の就職状況調査』)。昨年よりも改善したとはいえ、多くの大学生が就職に困っている。一方、企業では65歳以上の人びとを対象に、定年後も引き続き働き続けることのできる「雇用延長(こようえんちょう)」を行っている。

――国と地方が抱えている借金「政府債務額(せいふさいむがく)」は今や1000兆円を超えようとしている。国民1人当たりが背負う借金の額は、2歳の赤ちゃんの場合、すでに約750万円。ちなみに現在66歳の人が0歳児の頃は、1人14万8000円だった。

 最近のお年寄りは恵まれているけど、若者は大変だ……などと言いたて、いたずらにお互いの溝を深めるのはけっしていいことじゃない。でも、これらからわかるように、日本はお年寄りと若者の“恵まれ度”の違い「世代間格差」がとても大きな国だ。