世界に誇る技術を持つ日本の中小企業は、後継者不足などから事業承継が難航するケースも多い。そういった課題を持つ企業を次々とグループ化、成長を続けているのが日本製造(旧MJG)だ。田邑元基代表取締役社長は、現状の日本の製造業が抱えるピンチをチャンスに変えたいという志を持って、参画企業の経営改善や事業再生に挑む。スピード感あふれるM&Aの意図や、これらの企業を束ねた先の世界市場を見据えた未来図、今の製造業に必要な新たなビジネスモデルなどについて詳細を聞いた。
事業承継で悩む日本の製造業。それらの中小企業を束ねて「モノづくりプラットフォーム」を目指す
日本の中小製造業は、その高い品質や独自の技術を世界に認められてきたものの、外部環境の変化などで事業承継がうまくいかず、その貴重な技術が失われるというケースが少なくない。そういった世界に誇れる技術を持ちながら事業承継に悩んでいる企業を引き受け、成長を続けているのが日本製造だ。
2017年に設立された日本製造がこれまでにグループ化した中小企業は32社(24年7月1日現在)。恐るべきスピードだが、これらは全て製造業であり事業承継に悩みを抱えていた。売上高は各社数億~数十億円程度で、事業分野は、製造の自動化を行うFA機器製造(8社)、金属加工製造(8社)、半導体製造(2社)など多岐にわたっている。なぜ、こうした企業の受け皿になっているのか。田邑元基代表取締役社長は次のように語る。
「後継者がいないために廃業してしまえば、長年培ってきた技術が途絶え、世界的に高く評価されてきた日本の製造業が衰退してしまいます。それはあまりにもったいない。そこで事業承継に悩む中小企業のモノづくり力を束ね、それぞれの強みを掛け合わせることで日本の製造業、特に時代の変化に追い付けていない企業が抱える課題を解決し、時代に合わせた収益構造に変えていきたい。そのため、独自の技術を持つ中小企業を積極的に引き受けて、モノづくりプラットフォームを目指しています」
日本の製造業が抱える課題の一つとして、田邑社長は顧客から発注された通りの製造機器やユニットパーツを製造・納入する一般的なビジネスモデル(プロダクトアウト型)だけでは経営が安定しない点を挙げる。田邑社長が力を入れているのは、顧客の意見・ニーズをくみ取って製品開発を行う「マーケットイン型」の製造業だ。
次ページからは、田邑社長が描く国内の中小企業が世界へと飛躍するための戦略、また実際に支援を受け、グループに参画した企業側のインタビューも交えながら、日本の製造業が目指すべきビジネスモデルについて詳しく紹介していく。