半導体メモリー大手のマイクロンが「AI時代」に日本での存在感を一気に高めている理由

半導体メモリー製造大手の米マイクロン・テクノロジー(以下、マイクロン)が日本でのコミットメントを強め、存在感を高めている。半導体といえば、GPU(画像処理半導体)などロジック半導体が注目されがちだが、AI時代を迎え、ますます重要性を増すのが半導体メモリーだ。マイクロンは日本の半導体企業であったエルピーダメモリを合併したことでも有名だが、2度の日本政府の助成金を受け、日本に累計で180億ドルを投資している。このほど来日したマイクロンの上級副社長 グローバル事業担当のマニッシュ・バーティア氏にインタビューし、AI時代になぜ、半導体メモリーが重要なのか、同社が日本で進める最先端メモリーの開発・製造戦略、同社が積極的に展開する広帯域メモリー(HBM)の競争優位性、日本のサプライチェーンとの協業関係、そして日本の拠点における本格的な半導体人材育成の取り組みなどについて聞いた。

なぜAI時代にメモリーが重要なのか

 先端領域はむろんのこと、多種多様な産業、日常のビジネス、教育の現場まで、いまや、あらゆる領域でAI(人工知能)が必要不可欠なテクノロジーであることに疑いの余地はないだろう。その「AI時代」を支える、いわば陰の主役ともいえるのが半導体メモリーだ。

 AIは、大量のデータを基にアルゴリズムが将来の予測や精密な分析結果を導き出す。そのAIモデルの精度はデータ量が大きければ大きいほど向上する。AIの能力を左右するのは、実はデータの処理速度だけではない。米マイクロン・テクノロジー(以下、マイクロン)の上級副社長 グローバル事業担当のマニッシュ・バーティア氏は「同じ処理を複数のデータに、同時に適用する『データ並列性』、つまり、同時に処理・分析できるデータ量の多さである」と説明する。

 半導体といえば、CPU(中央演算処理装置)や、米エヌビディアが主力としているGPUといったロジック半導体ばかりが注目されるが、データ量が大きくなれば、当然ながらより多くのメモリーが必要になる。だからこそ、AIの時代、特に生成AIにとってはメモリーが重要になってくるのだ。パソコン、スマートフォン、スーパーコンピューティング、クラウドなど、あらゆるデバイスにAIが搭載される今日、メモリーの必要性は増す一方である。

 その半導体メモリー製造で重要な役割を果たし、今後、日本を拠点として大きな躍進を期待されるのが、マイクロンである。次ページ以降では、マイクロンが「AI時代」に果たす重要性や日本との深いつながり、注力している人材育成策などについて、詳しく解説していく。