個人間の取引を橋渡しするクラウドソーシングが、今年のWEBトレンドの一つになっている。オールジャンルのサービスから、分野を特定したコアなサイトまで、CtoC(Consumer to Consumer)のサービスが、いま急増している。
不動産も、クラウドソーシングが増えつつある分野だ。「airbnb」は、部屋を貸したい人と借りたい人をマッチングするサービス。現在、世界192ヵ国をカバーし、ビジネスユースも取り込んで拡大を続けている。
自宅にちょっとした空きスペースがあり、誰かに活用してもらいたい場合は「軒先.com」も便利だ。ここから派生した「軒先パーキング」は、空き駐車場をシェアするサービス。
物件探しに関しても、WEBサービスが充実してきた。しかし、いざ気に入った物件が見つかった場合、意外と面倒なのが「下見」という作業ではないだろうか。この下見に特化したCtoCサービスも登場している。「nai-ma(ナイマ)」だ。
下見は引っ越しの際、不可欠だが、遠隔地となると足を運ぶだけでもかなりの時間と費用がかかってしまう。そこで、代わりに現地在住者に確認してもらおうというのが、nai-maのコンセプトだ。
下見を依頼したいユーザーは条件を投稿し、調査希望者を募る。動画を撮ってほしい、騒音をチェックしてほしい、駅からの経路を詳しく知りたい、水回りをチェックしてほしいなど、詳細に希望項目を挙げることができる。また、下見希望の時間帯も設定できる。夜間の近隣状況など気になる部分を確認してもらうことも可能だ。
その上で希望の費用を明示。これに対して、調査を希望する側は内容と金額を考慮して入札をする仕組みだ。取引が成立したら、システム上の取引ナビ等で連絡を取り合って作業を行っていく。取引が成立した場合のみ、調査費用に付加する形で入札金額の10%のシステム利用料が発生する。
例えば、東京から大阪へ下見に行く場合、往復の交通費だけでも4万円近くかかってしまう。下見した物件が満足だったら良いが、NGとなれば、さらに物件探しを続けなければならない。その労力とコストは相当なものだ。
気になるのは、調査人に関してだが、nai-maでは調査人のプロフェールや取引履歴、過去の評価が一覧できる。加えて、Facebookと連動する機能も搭載。相手のデータや投稿などを確認し、応札の参考にできるよう工夫されている。
ただ、昨今、こういった物件の下見代行サービスは、少しずつ増えているものの、まだ都市部に限定されているのが現状だ。
また、不動産業者の中には下見サービスを行うところもあるが、プロだけに相応の費用がかかってしまうし、フラットな目で確認してもらえるか疑問も残ってしまう。利害の絡まない第三者の目で思い通りの下見をしてもらうのは、一つの最善の方法ではないだろうか。
転勤は急を要する場合が少なくない。ただでさえ忙しい異動時、物件の下見まで十分に行えないというケースは多い。そのため、住んでみてから、いろいろと問題が浮上してしまった……そんな経験をお持ちの方もいるはずだ。
まだまだ転勤の多い日本のビジネスシーン。こういったCtoCのサービスをうまく利用して、コストとストレスを削減するのも、これからはビジネスハックの一つになるのではないだろうか。
(吉田由紀子/5時から作家塾(R))