専業主婦だった妻の
「公的年金」受け取りはありがたい

 2年後からは、奥さんの公的年金の受け取りが始まる予定です。奥さんの公的年金は国民年金と国民年金基金を合わせて月30万円、年間360万円の受給予定と書かれています。税引き後の手取り額にすれば、320万円前後になると思われます。

 奥さんがこれまで専業主婦であったことを考えると、この収入増は非常に大きいです。2年後から支給される年間320万円は、Rさんが退職する65歳までは貯金に回してもよいですし、多少は使ってしまっても大丈夫です。

 今回の試算では、Rさんが退職するまでの6年間は、奥さんの公的年金の年間手取額320万円のうち200万円を貯金し、120万円を使うことにします。

 そうすると、65歳までの6年間で1200万円の金融資産を積み上げることができます。Rさんが現在保有する計9500万円の金融資産に、この1200万円を加えると、退職時の金融資産額は1億700万円になります。

住宅ローンは先に支払い
“借金ゼロ”で引退すべきだ

 この資産が、老後の生活を送る上で安心できる金額かどうかは後ほど説明します。その前に、Rさんが65歳で退職した後の家計収支について、気になる点を指摘しておきます。

 それは、630万円の住宅ローン残高です。6年半後の66歳で完済予定と書かれていますが、Rさんの年齢を考慮すれば、住宅ローン控除は既に終了しているはずです。

 Rさんは自営業者なので、個人ではなく法人名義で住宅ローンを借り入れているのかもしれません。法人名義で借り入れている場合はそのままでも大丈夫ですが、毎月8万円の負担が退職後もしばらく続くことを考えると、個人で借りている場合は繰り上げ返済によって早めに完済した方がよいと思います。

 試算では、繰り上げ返済をすぐに行い、毎月の住宅ローンの返済額を貯金に回すことにします。短期的には630万円の支払いが生じますが、中長期的には住宅ローンの返済に充てていた月8万円(年間96万円、65歳までの6年間で576万円)を貯金に回すことができるためです。

 その結果、65歳時点での金融資産額は1億646万円(1億700万円-630万円+576万円)となります。ローンを毎月支払い続けた場合よりもやや少ないものの、“借金ゼロ”の状態で老後を迎えられる金銭的・精神的メリットは大きいのではないでしょうか。

 それでは、住宅ローンを払い終えた前提で、65歳以降の家計収支を試算してみます。