夫の定年退職で世帯年収ダウン
赤字家計にいつまで耐えられる?

 続いて、ご主人が定年退職した後(5年後以降)のキャッシュフローを試算していきましょう。ご主人は65歳で退職後、再就職せずに年金生活を送るとします。年金の支給額は、額面で年間312万円、手取り額は年間270万円とします。

 2歳下のYさんは、その頃もお仕事を続けていると仮定します。ただ、先ほど話題に出たアパートを売却したことで、収入は700万円から減っているはずです。

 収入の内訳が書かれていませんが、アパートは個人所有で6室もある一方、ビルは他の人と共同保有していることから、アパートの方がビルより収入が多いかもしれません。

 試算では便宜上、収入の内訳を2対1(アパート収入460万円、ビル収入240万円)と仮定します。5年後以降はアパートの売却によって前者(460万円)が失われたとすると、Yさんの収入は後者(240万円)のみになります。

 ご主人が312万円、Yさんが240万円ですから、5年後の世帯年収は552万円まで落ち込むと考えられます。

 一方の支出ですが、5年後は娘さんも就職し、お子さんは2人とも自活しているはずです。そのため、年間支出は現在の800万円(義実家への支援額を含む)から少し減り、700万円程度に落ち着くとします。

 世帯年収が552万円、年間支出が700万円ですから、5年後の赤字額は年間148万円です。少し多い印象を受けるかもしれませんが、さらにその2年後(今から7年後)には、Yさんの年金受給(月額6万円、年間72万円)が始まることを忘れてはいけません。

 Yさんの年金受給額は、65歳以上の公的年金等控除額(110万円未満)を満たしており、全額が手取り収入になります。そのため、前述の148万円から72万円を差し引いた76万円が、今から7年後以降の年間赤字額になると推測できます。

 148万円のマイナスが2年間続くことで、Yさんの年金受給が始まる頃には、金融資産は先ほど試算した1億6000万円から少し減っています(1億5704万円)。とはいえ、元々の資産規模が大きく、定年から2年後に赤字額が約半分になることから、当面の生活には何の心配もいらないでしょう。

 では、お二人が介護付き老人ホームに入った後の家計はどうなるのでしょうか。