老人ホームの入居費用を支払った後も
果たして家計は安泰なのか?

 ここでも便宜上、入居時期を今から20年後(Yさんの年金受給開始から13年後)と仮定します。ご主人が80歳、Yさんが78歳の頃に入居する算段です。

 この時点での金融資産は、先述の1億5704万円から13年分の累計赤字額である988万円(76万円×13年間)を差し引いた、1億4716億円です。ここから、老人ホームの入居一時金2500万円を支払ったあとの残高は1億2216万円です。

 それ以降は、Yさんが共同保有中のビルを20年後に明け渡すと記載があるので、収入は夫婦の年金だけになります。ご主人270万円、Yさん72万円の年間342万円ですね。

 支出額は、老人ホームの家賃が年間420万円(月額35万円×12カ月)かかると想定します。介護付きということもあり、やや高めに見積もりました。これに加え、医療費や雑費が年間80万円ほど上乗せされ、年間支出額は500万円程度になるとします。

 そうすると、老人ホーム入居後の年間赤字額は、500万円と342万円の差額である158万円となります。そこから20年ほど老人ホームで生活し、ご主人が100歳を迎えた頃の累積赤字額は3160万円(158万円×20年間)となります。

 それでも、心配は無用です。入居時点の金融資産(1億2216万円)から、20年間の累積赤字額(3160万円)を差し引いた残高は9056万円です。1億円には満たないものの、赤字家計を100歳まで続けても、かなりの金額が手元に残るわけです。

 このことを考慮に入れて、冒頭で検討していたお子さんへの支援を早めにスタートさせても問題ないでしょう。

 将来の相続税負担などを視野に入れると、お子さんが若いうちから生前贈与を開始し、Yさん夫婦の資産を徐々に減少させておくのも手です。具体的な方法は、資産税に詳しい税理士に相談してみてください。

 試算内容をまとめると、総じて将来は安泰だという結果が出ました。最初に述べた通り、推測を交えながら試算した項目もありますが、この結果を通じて、Yさんの不安を少しでも軽減できれば幸いです。