秀島史香さん(秀島史香さん(写真:著者提供)

 現在担当しているFMヨコハマ『SHONAN by the Sea』は日曜朝の番組なので、平日夕方の雰囲気とは大きく違ってきます。家でのんびり聞いている人が多いので、リラックスした雰囲気に水を差さないよう、声のトーンは少しだけ低めに。

 語りかけている相手は、まだ布団の中かもしれません。それとも、時間に追われず朝食を作りながら、家族とゆっくり過ごしながら、のんびり散歩しながら、かも。いずれにしても、低めで穏やかな声のほうが邪魔になりませんし、せき立てません。

 どんな番組であっても、まずはリスナーが「今この瞬間、何をしながら聞いてくれているのかな。自分なら……」と重ね合わせて想像することから始めます。日曜朝ならば、コーヒーの香りを楽しみながらくつろいだり、好きな音楽をかけてまどろんだり……。

 まるで同じ空間で自分もリスナーと一緒に過ごし、会話をしているような感覚になることで、ピッタリな声に着替えられるのです。

 どのような場面でもそうですが、「よし、いい仕事するぞー!」と思うあまり、張り切りすぎて空回りしてしまった経験はありませんか?

 原因は「自分が自分が」ばかりになってしまい、相手の状況を考えず突っ走ってしまうから。相手が見えていないと、こちらが頑張れば頑張るほど、相手が心地よいと感じる声からどんどん遠のいてしまいます。

お疲れ気味のパートナーには低い声で

 ラジオやテレビの仕事をしている人に限らず、日常生活でも、私たちは状況に合わせて自然に声を使い分けています。自分なりの経験で「どんな声がその場にふさわしいのか」「どうすればお互い気持ちいいか」が身体に蓄積されて、意識せず声にしている人も多いはず。

 あいさつならば、朝、出社したときの「おはようございます!」はハキハキした声で。帰り際の「お疲れさまでした」「お先に失礼します」は、感謝の気持ちを込めた穏やかな声で。

 生活の中で意識的に声を使い分けてみると、職場や家族の関係にもうれしい効果があります。