着目点は「民主主義」「言論の自由」

 この記事を書いていたら、現在日本に留学している二人の中国人学生からこんな質問をされた。

「世論調査で約6割もの人が国葬に反対している。普通なら政府は民意を受け止めて、考え直すのではないか? しかし国葬を強行した。日本は本当の民主主義の国なのか?」

「テレビを見ていると、国葬に反対している人がとても多いという印象だった。しかし実際に献花に行ってみたら、ものすごく人が多かった。マスコミは反対派に傾いて報道していると感じる。これは公平なのか?」

 国葬をめぐるさまざまな動きや反対運動は、日本人から見ると別に珍しくもなく、当たり前なことだったかもしれない。しかし、中国人にとっては自国にない光景であり、衝撃的かつ新鮮に映った。コロナ前に観光や仕事で日本を訪れたことのある人は多いし、また、近年は在日中国人の人口が増えている。以前よりも日本という国が身近になって、関心を持つようになってきた。そのために、中国人からさまざまな感想や疑問が出てきたのだ。

 元首相が銃撃されて亡くなり、国葬という形で弔われる。賛成と反対はほぼ同数か反対派が多いくらいだが、国葬は滞りなく行われる――。王志安氏を筆頭に在日中国人が伝えた安倍元首相の国葬の様子は、中国人にとって、民主主義とは何か、言論の自由とは何かを考える意義のあるきっかけとなった。国の政治制度や環境が違っても、共感できる部分があったからに違いない。