(2)「豪華で派手」からの決別

 今回のビジネス誘致作戦はかつての豪華さや派手さがあまり出ずに、むしろ庶民的路線を求める傾向がある。

 私が迎えた江蘇省常州市武進区から来た誘致団は、投資促進服務センター主任らわずか2人だった。最小の「小分隊」だ。事前に座談会の会場や参加者への食事招待などについて確認したとき、インターネット電話に出た現地の責任者から「会場は普通のレストランでもいい。十分な意見交換ができるように、参加人数も抑えてください」と念を押された。

 結局、私がよく利用している銀座の香港料理店を会場にした。予算内で開催できることを最優先の選択基準にしたからだ。その代わり、座談会に使うパワーポイント資料を投影するプロジェクターなどがなかったから、こうした問題をクリアするために、相当苦労した。

 もちろん、世代交代による問題点もある。日本語はできるが、日本の社会事情などは知らない若い人がビジネス誘致に来ると、不謹慎な発言によるトラブルが発生することがある。

 ある食事のテーブルに差し入れのニュージーランド産高級ワインが出たとき、ある若い誘致団団員はワインの瓶に貼られている輸入品説明のラベルを見て、「これはワインではなく、女性や子供が飲む飲料だ」と感想を口にした。驚いた日本側が「どうしてそう思ったのか」と聞くと、「だって、ラベルにわざわざ“果実酒”という文字を表記しているから」と彼は自分の主張を説明した。

 ワインを飲む人ならわかると思うが、輸入ワインなどの説明には必ず「果実酒」と書かれている。これは日本の法律で決められているからだが、それを知らずに主張したというわけだ。

 そのやり取りの一部始終をずっと見ていたある参加者は、発言の内容を大きく変えた。もともと予定していた中国ビジネスに関する提案はしなかった。翌日その理由を尋ねると、「中国からの担当者が日本のことをあまり知らないから、提案しても無駄だと思った」という回答が戻ってきた。

 結局、私は老婆心から、「若い日本市場担当者はもっと勉強に力を入れないといけない」と中国にメッセージを送ることになった。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)