中国造船産業が着手、単なる技術だけではない難しさ

 今年の春節が終わった頃のことだ。長江河口の南側に、未完成の白い船の巨体がドックの中に静かにたたずんでいた。春ごろには、中国が建造した初の大型クルーズ船がこのドックから出ることになっている。船の内部では、工期に間に合うよう、3000人以上の作業員が作業に追われていたという。

 初の中国産・大型クルーズ船は総トン数約14万トン、長さ323メートル、全幅37メートルに達した。クルーズ船を地面に垂直に立てると、ヨットホテルという愛称で知られるドバイのホテル「ブルジュ アル アラブ ジュメイラ」よりも2メートルほど高くなる。

 設計と建造の難易度が極めて高いことから、大型クルーズ船は大型液化天然ガス運搬船や空母とともに、中国では造船産業の「王冠に輝く真珠」と呼ばれる。現在、大型クルーズ船は、中国造船産業がまだ手掛けていない唯一のハイテク・高付加価値の船舶となっている。

 クルーズ船の設計に関わった関係者の話によると、クルーズ船の船全体の部品数は中国が製造した「C919」という大型旅客機の5倍に相当し、中国版新幹線である高速鉄道の『復興号』列車の13倍の数だ。工事は膨大な量だけではなく、非常に複雑だ。

 中国船舶集団(以下、中船集団)傘下の上海外高橋造船は、今回の大型クルーズ船製造の設計・計画、工芸・工法から現場管理に至るまでを、引き受けた。

 社内では「1号プロジェクト」と位置付け、船名はまだなく、「H1508船」と呼ばれている。H1508船は今年5月末にドックから出て、7月にテスト航行を開始する予定で、11月にクルーズ船の命名を完了し、今年中に引き渡しを行うことになっている。

 報道によると、内装を担当する関係者は、次のようにクルーズ船製造の難しさについて話している。

「中国の船舶製造は過去数十年の高速発展で工業化製品に焦点を当て、技術的難関を突破し続けてきたが、クルーズ船は工業製品というだけでなく芸術品でもあり、船上での生活を楽しむ要素を与えなければならない」