ひたいに熱さまシートを貼った子ども写真はイメージです Photo:PIXTA

小林製薬はなぜ、長年愛されるヒット商品を創出し続けることができるのか。衛生日用品のニッチなマーケットで勝ち続けてきた小林製薬を長年リードしてきた小林一雅会長が、経営の秘訣を語り明かす。本稿は、小林一雅『小林製薬 アイデアをヒットさせる経営』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

マーケティングの肝は
「わかりやすさ」

 26歳のときに1年間、米国留学をした私は、主にマーケティングと広告について学びました。現地で得られた教えを一言に集約すると、それは「わかりやすく相手に伝える」ということでした。今でもこれこそがマーケティングや広告の「肝」であると理解しています。

 衛生日用品の世界では、製品を説明するのに、難しい言葉は必要ないのです。それゆえ、わかりやすい言葉で相手に納得してもらうことを、当社は仕事上の鉄則としています。

 利口な人は、正確に情報を伝えようとすればするほど、細かい数字や専門用語など、難しい言葉を使いがちです。そうした説明は、相手が専門家でない限り、理解の妨げとなる可能性があります。結果として、相手の聞く気持ちを失わせ、自分の伝えたいことをしっかりと届けることができなくなります。ビジネスの、特にマーケティング分野においては、そのような愚行を避けなければなりません。

 例えば、商品名や宣伝コピーには、それぞれのメーカーが大事にするイメージやカラーといったものがあるものです。小林製薬は、資生堂のように、オシャレな宣伝文句を使うことはめったにありません。それは、それぞれの企業文化や取扱い商品の違いなどに起因するもので、どちらがよいというようなものではないのです。

 けれども、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)や花王などの大手も含め、どの企業にも共通していることがあります。それは、結局のところ、「わかりやすさ」を追求しているということです。

 小林製薬の製品開発では、「ネーミング」「パッケージ」「広告」、そして「販促」の大きく4つを重視します。重視するとはすなわち、それら製品開発に関わるすべての過程において、「いかにお客さまにわかりやすく伝えるか」を第一に考えるということです。