人事評価で「数字至上主義」の落とし穴、仕事の質が低い人の評価アップも目先の数字にとらわれることが組織の不利益につながることは多い Photo:PIXTA

科学的であることを標榜(ひょうぼう)し、数字をもとにした人事評価がもてはやされている。だが、数値化すれば科学的になるというのは幻想だ。そこには大きな落とし穴がある。厳しい数値目標が不祥事を引き起こすといった事例には事欠かないが、そのような意味でなくとも、数字にとらわれ、数字を信奉することが組織の不利益につながることは多い。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)

数字への執着が
手抜きの横行につながる

 実力のない人物が、上から気に入られているといった理由で昇進していく。そのような情実人事が横行していては、いずれ組織は行き詰まってしまう。

 主観的でいいかげんな人事評価が横行するのは、何としても避けなければならない。そのためにも客観的な評価基準が欲しい。だから、客観的な数字を重視する。評価基準に数値を取り入れることには、このような背景があるだろう。

 たとえば、営業部門の上司が、お気に入りの部下を昇進させたいと思っても、別の部下の方がはるかに有能で、売上金額で大きな差がついている場合、そのような情実人事はさすがにやりにくいはずだ。売り上げという明確な数字を評価基準に設定することで、あからさまな情実人事を阻止することができるのだ。

 だからといって数字を信奉するのは危険だ。