Photo by Ayako Suga
西武ホールディングスと、筆頭株主で投資ファンドの米サーベラスグループが対立を深めている。
表面化したのは、サーベラスが3月11日に、株式公開買い付け(TOB)を実施し、現在32.44%の持ち株比率を最大で36.44%にまで引き上げると公表したことによる。併せて6月末の西武の株主総会で、元金融庁長官の五味廣文、元日本郵政公社総裁の生田正治、あおぞら銀行取締役の白川祐司の3氏を、取締役に推薦すると表明したことで、経営への関与を深める姿勢を鮮明にした。
西武は、TOBの公告から10営業日以内の26日までに意見表明しなければならないが、サーベラスの提案を拒否する可能性は高く、敵対的TOBに発展しそうだ。
そもそも対立の火種は、昨年からくすぶっていた。サーベラスの強い要請を受けて、西武は2012年中の再上場を目指していたが、その前提条件としてサーベラスとの資本提携の解除を申し入れたところ、逆に影響力を強めたいサーベラスの逆鱗に触れた。
とりわけ焦点になったのが、再上場の売り出し価格。サーベラスは極力高い投資リターンを期待していたとみられており、当時、一部証券会社などが妥当とみていた価格をはるかに上回っていた。
そこでサーベラスは、企業価値を高めるために、さまざまな“禁じ手”を提案してきた。
鉄道の不採算路線の廃止や、具体化もしていない品川再開発計画参加の公表、プリンスホテルのサービス料を2倍の20%へ引き上げるなどの案が含まれていたとされるが、公益性の高い鉄道業や競争の激しいホテル業を営む西武にとって簡単に首を縦に振れないものばかり。意見の対立は解消されるべくもなく、再上場計画はストップしてしまった。