スゴ腕外資系保険営業マン・32歳の男性の実例

 実は今回取り上げた事例は、実際に私の友人Yさんが「朝の三択」を実施した例に基づいている。
 Yさんは、外資系の保険営業のマネジメントをされている32歳の男性。
 営業成績もマネジャーとしての力量も申し分はないのだが、会社の規定で英語力をつけなければならないにもかかわらず、なかなか気持ちが乗らない。
 仕事もあり、家族もあるので、日ごろの忙しさを理由になかなか本格的に英語を勉強しようという気持ちにならなかったのだ。
 とはいえ、TOEICテストの試験日は固定されている。11月である。
 会社の方針は理解できるし、やらなくてはダメだという気持ちもある。しかし、なかなか決断できないということで「朝の三択」をしていただいた。
 選択肢は、前述の3つ。
 そしていよいよダブルフレーミングをしようとしたとき、思いもかけないことを自分自身が書いたと、Yさんは後で教えてくれた。
 というのは、この3つの選択肢があれば、おそらく真ん中を選ぶだろうとYさんは想像していたのだそうだ。漠然と、週2回くらい駅前の英会話スクールに行くという決断をするに決まっていると。

なぜ、チャレンジプランのうまくいく確率が低かったのか?

 ところが、いざダブルフレーミングをしてみると、次のような結果となった。(カッコ内は、うまくいく確率/うまくいかない確率)

●【ノープラン】週に1度、参考書で10分勉強(0%/100%)
●【チャレンジプラン】週2回、駅前スクールへ通う(20%/80%)
●【ビッグプラン】4月から半年間、アメリカへ海外留学(90%/10%)

 ここで注目すべきポイントは、チャレンジプランのうまくいく確率が意外にも低かったことだ。Yさんは自分で書いていて、自分自身で驚いたと話している。

 そもそも施策として、なぜ駅前の英会話スクールに通うことが思い浮かんだかというと、たまたま駅の周りを歩いていたときにビラを渡されたことがきっかけだった。
 それ以降、TOEICテストのスコアを伸ばすなら、Yさんはこういった駅前の英会話スクールの活用が一番だろうと漠然と思い込んだのだ。

 しかし、一切のノイズをシャットアウトしたうえで冷静に考えたところ、駅前の英会話スクールは英会話専門の学校であり、TOEICテストのスコアアップに直接関係がないと改めて感じたのである。

 文章だけを読んでいると、そんなあたりまえのことにいま気づいたのかとあなたは思うかもしれない。しかし、こういう事象は頻繁にあるものだ。

 たとえば、別の人に「朝の三択」をしてもらったときも同じことが起こった。
 その方は「2ヵ月間で5Kg」のダイエットをテーマに「朝の三択」をしてもらったのだが、チャレンジプランに設定したのは「毎日チョコレートやケーキを食べない」だったのだ。
本人にとって、チョコレートやケーキを毎日食べなくするのは大変な葛藤を覚えるものだろうが、冷静に考えれば、それで5Kgを減らせるかどうかはわからない。
 この方も、ダブルフレーミングをしたところ、「うまくいく確率30%、うまくいかない確率70%」と自分の手で書いた。
 日頃から直感で物事を考える癖があると、このような思い込み(しかも確率の低いプランで葛藤)をしてしまうものだ。