ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

既存の大企業こそ
企業家的なリーダーシップの機会と
能力と責任を持つ

上田惇生
【第345回】 2013年8月19日
著者・コラム紹介バックナンバー
ダイヤモンド社刊
2100円(税込)

 「この壮大な転換期において、社会の安定を確実なものとするには、既存の企業が、生き残り、繁栄する術を学ぶ必要がある。そのためには、既存の企業が、企業家として成功するための方法を学ばなければならない。われわれは、必要とされる企業家精神を既存の企業に期待せざるをえない」(ドラッカー名著集(5)『イノベーションと企業家精神』)

 加えてドラッカーは言う。「企業家的なリーダーシップの能力は既存の企業にこそある。それらの企業は必要な資源、とりわけ人材を持っている。すでに事業をマネジメントし、マネジメントのチームをつくり上げている。したがって、企業家としての機会と能力と責任は、既存の企業にこそある」。

 大企業に企業家精神は似合わないとは、虚言である。企業家精神を発揮している大企業はたくさんある。企業家精神に無縁の大企業こそ稀有というべきである。企業家精神抜きで生き残れているはずがないからである。

 しかも、既存の企業が、チェンジリーダーとして変革のリーダーシップを取れないならば、せっかくの文明の進歩もここまで、ということになる。
 大企業が企業家精神を不得手とするかに見えるのは、規模のゆえではない。既存の事業、特に成功している既存の事業のゆえである。既存の事業は、マネジメントに対し、絶えざる努力と不断の注意を要求する。「日常の危機は常に起こる。延ばすことはできない。既存の事業は常に優先する」。

 そもそも、既存の事業が利益をもたらしてくれなければ、イノベーションのための投資もできない。

 これに対し、新しい事業は常に小さく、不確かである。どうしても先延ばしになる。

 したがって、既存の事業が企業家精神を発揮するには、それなりの構造上の配慮が必要となる。新しい事業を担当する部局を既存の事業を担当する部局の下につけてはならない。

 「多くの大企業が企業家としてイノベーションに成功しているという事実が、イノベーションと企業家精神が、いかなる企業においても実現できることを示している。ただし、そのためには、意識的な努力が必要である。企業家精神の発揮を自らの責務とすることが必要である」(『イノベーションと企業家精神』)

関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

上田惇生(うえだ・あつお) 

 

ものつくり大学名誉教授、立命館大学客員教授。1938年生まれ。61年サウスジョージア大学経営学科留学、64年慶應義塾大学経済学部卒。経団連、経済広報センター、ものつくり大学を経て、現職。 ドラッカー教授の主要作品のすべてを翻訳、著書に『ドラッカー入門』『ドラッカー 時代を超える言葉』がある。ドラッカー自身からもっとも親しい友人、日本での分身とされてきた。ドラッカー学会(http://drucker-ws.org)初代代表(2005-2011)、現在学術顧問(2012-)。

 


3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

マネジメントの父と称されたドラッカーの残した膨大な著作。世界最高の経営学者であったドラッカーの著作群の中から、そのエッセンスを紹介する。

「3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言」

⇒バックナンバー一覧