先代の急死で「社長」に就任
創業以来のピンチに遭遇するが…

 よくよく聞けば犬飼社長、「営業」も兼務している。それに、社長に就任してから丸5年しか経っていない。

「じつは、先代が急死しまして」

 その日、先代はいつものように自宅で昼食を済ませた後、いったん会社に戻って、夕方、ある会合に出た。

「そしたら、そこで倒れちゃいまして。そのまま亡くなってしまったんです」

「さっきまでふつうにお昼を食べていたのに、ですか?」

「そうなんですよ……」

 驚いたのは社員も同じである。翌日、朝礼で報告すると「まさか」「どうして?」「昨日はあんなに元気だったのに……」と狐にでもつままれた様子であったという。

 むろん、車と会社は急には止まれない。という訳で、先代の息子である犬飼さんが急遽、3代目の社長に就任することになった。

 商社の営業マンを経て、1999年に祖父と父親が経営する現在の会社に入社した犬飼さん。会社にもなじみ、「そろそろ経営のことも勉強しておいてくれよ」と先代に言われていた矢先の出来事だったという。

「父が亡くなったのは2008年10月です」

「リーマンショックの直後じゃないですか!」

「葬儀をして、四十九日が終わったなと思ったらもう決算。うち、12月決算なんですね。だから、もう、ほんと大変で……」

 自社株にかかる相続税と贈与税をなんとかせねば、と税制を勉強していたところ、税理士さんから新しい制度が活用できることを教えてもらった。納税が「免除」されると思っていたその制度がじつは「支払い猶予」であったなど、多少の勘違いはあったものの、なんとか無事にここまで社長業を続けることができている。

 それにしても、だ。36歳でいきなり社長に就任して社内をまとめられるものだろうか?

 税金よりも、筆者はそっちの方が心配である。

 しかし、ご本人は意外にもあっけらかん、とこう語る。

「そっちはむしろ急だから良かったんですよ」

 先ほどとはうって変わった、明るい表情を見せる。

「もともと意思の弱い人間ですから、『お前がやるしかないんだぞ』という状況に置かれないと動けない。だから、そういう状況に父がしてくれたんだ、と思っているんです」

「それと、先代が亡くなったのがあまりに急だったんで、社員も一致団結してくれた。たぶん、『この弱々しい社長を助けてあげよう』と思ってくれたんじゃないでしょうか」