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2030年のビジネスモデル

フィリピンの貧困街に100のビジネスを立ち上げる

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第13回】 2013年11月28日
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孤児院の一人の大学生に仕事をつくることによって、
3人の路上生活児童を新たに保護する

 フィリピン、セブ島の孤児院。そこにいる大学生たちに、英会話講師として必要とされるスキルを300時間のトレーニングを通じて伝授する。その後、彼ら彼女らは、スカイプを通じて、日本の小中学校の生徒(ジュニア)向けに英会話レッスンを提供する。

 英会話講師として収入を得た孤児院の大学生は自活し、NGOはその分の浮いた援助予算で、路上で生活するストリート・チルドレンを新たに3人保護できる。

 このビジネスモデルを回転させて、できるだけ多くの路上生活児童と共に、彼ら彼女らのワクワクする夢を実現することが、株式会社ワクワーク・イングリッシュ代表山田貴子さんの目標だ。

 同時に、孤児院の大学生に自活の道を切り拓き、後に続く幼い子供たちに希望を与えることもできる。フィリピンの孤児院と日本の学校をつなぎ、人助けとビジネスを融合させた見事なハイブリッドモデルである。「生まれた環境に関係なく、誰もが自分の心のワクワクに正直に、夢を実現できる社会をつくりたい」と山田さんは語る。

ワクワークの目指すスラム支援モデル (提供)ワクワーク・イングリッシュ

  フィリピンの貧困率は依然として高く、学校に通えず労働を強いられている子供たちがまだまだ多い。小学校の入学率は、見かけ上約9割に達しているが、交通費が払えないなどの理由から脱落を余儀なくされている子供たちも多く、卒業できる子供は約6割にまで減少してしまう。孤児院やNGOはフィリピン全土に約10万もあるともいわれるが、それだけの数があっても、保護を受けられずに、路上で飢えに苦しむ子供たちがあとを絶たない。

 なぜなのか?山田さんは、現地NGOの支援メカニズムを観察し、「路上から保護できる子供の人数は、既に支援している大学生が自立していく人数に依存している」ことを知った。

 大学生1人あたりの奨学金は学費が高いために、新しく路上から保護される子供の費用の3倍もかかる。ならば、孤児院の大学生が働いて自活する道をつけることが、路上生活児童を新たに救う道になる。

 ではその大学生たちに、どんな仕事を作ることができるだろうか? 山田さんはまず、スカイプを通じた国際的な英会話事業にその可能性を見出した。

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齊藤義明[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

facebookページ:https://www.facebook.com/yoshiaki.saito.1042

 


2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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