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嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え
【第2回】 2013年12月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
古賀史健

第2回
他者の期待を満たすために
生きてはいけない

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人生の悩みを吹き飛ばす
「課題の分離」とは

 そして対人関係の悩みを一蹴するために登場するのが、アドラー心理学独自の「課題の分離」という発想になります。「課題の分離」がどんなものであるか、再び哲人と青年の対話を引きましょう。

哲人 わかりました。それでは、アドラー心理学の基本的なスタンスからお話ししておきます。たとえば目の前に「勉強する」という課題があったとき、アドラー心理学では「これは誰の課題なのか?」という観点から考えを進めていきます。

青年 誰の課題なのか?

哲人 子どもが勉強するのかしないのか。あるいは、友達と遊びに行くのか行かないのか。本来これは「子どもの課題」であって、親の課題ではありません。

青年 子どもがやるべきこと、ということですか?

哲人 端的にいえば、そうです。子どもの代わりに親が勉強しても意味がありませんよね?

青年 まあ、それはそうです。

哲人 勉強することは子どもの課題です。そこに対して親が「勉強しなさい」と命じるのは、他者の課題に対して、いわば土足で踏み込むような行為です。これでは衝突を避けることはできないでしょう。われわれは「これは誰の課題なのか?」という視点から、自分の課題と他者の課題とを分離していく必要があるのです。

青年 分離して、どうするのです?

哲人 他者の課題には踏み込まない。それだけです。

青年 ……それだけ、ですか?

哲人 およそあらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと――あるいは自分の課題に土足で踏み込まれること――によって引き起こされます。課題の分離ができるだけで、対人関係は激変するでしょう。

 たとえばアドラー心理学のカウンセリングでは、相談者が変わるか変わらないかは、カウンセラーの課題ではないと考えます。カウンセリングを受けた結果、相談者がどのような決断を下すのか。これまでの自分を変えて、新しい一歩を踏み出すのか。それとも、このまま踏みとどまるのか。これは相談者本人の課題であり、カウンセラーはそこに介入できないのです。

 もちろんカウンセラーも、精いっぱいの援助はします。ある国に「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を呑ませることはできない」ということわざがあるそうですが、まさにアドラー心理学のカウンセリング、そして他者への援助全般もそういうスタンスだと考えてください。

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古賀史健(こが・ふみたけ)

ライター/編集者。1973年福岡生まれ。1998年出版社勤務を経てフリーに。これまでに80冊以上の書籍で構成・ライティングを担当し、数多くのベストセラーを手掛ける。20代の終わりに『アドラー心理学入門』(岸見一郎著)に大きな感銘を受け、10年越しで『嫌われる勇気』の企画を実現。

 


嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え

フロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨頭とされながら、日本では無名に近いアルフレッド・アドラー。彼はトラウマの存在を否定したうえで、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、対人関係を改善する具体策を示してくれます。まさに村社会的空気のなかで対人関係に悩む日本人にこそ必要な思想と言えるでしょう。本連載では、アドラーの教えのポイントを逐次解説することでわかりやすく伝えます。

「嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラー」の教え」

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