「このままだと、賛成・反対の両論併記の報告書が出てくるかもしれませんねえ」──。東京証券取引所のある関係者はこうつぶやく。
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東証を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)の斉藤惇CEOは、現在は午前9時から午後3時まで、1時間の昼休みを挟んで計5時間と、英ロンドンの8.5時間、シンガポールの8時間と比べて圧倒的に短い取引時間の拡大に強い意欲を示している。
ところが、有識者や証券業界関係者を集めて2月にスタートし、延長の是非や在り方を東証に提言する「現物市場の取引時間拡大に向けた研究会」での議論が、まとまる気配がないのだ。
研究会で東証側は当初、勤務先から帰宅後のサラリーマンの取引ニーズを取り込んだり、日本時間では深夜から早朝に当たる欧米市場の動向を株価に反映させるとして、午後9時から11時に、通常の市場と違って証券会社が参加の可否を判断できる新たな市場を設けるという試案を提示した。
しかし、機関投資家の十分な参加が見込めないため市場の流動性が枯渇し、株価が急変するなど価格形成に問題が起きるとの懸念が指摘された。
そこで東証は4月、午後3時半から5時までの夕方に新たに市場を設ける案を提示。だがこれでは、当初の狙いであった会社帰りのサラリーマンの投資機会は生み出せない。考えられるあらゆる条件を満たす妙案が見当たらないのだ。
さらに研究会では、そもそも取引時間を拡大するかどうかについて意見がぶつかり合っている。「24時間取引可能にすべきだ」との主張がある一方で、東証では寄り付き直後と引け前に取引が集中する特徴があることから、「取引時間を短くした方が流動性が高まる」との声さえ上がっている。