ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

クーデター企業、セクハラ大学の「確執」に学べ!
“普通の人”がブラック化するコミュニケーションの罠

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第15回】 2014年12月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

専務が社員を味方につけクーデターを
社長が追われ倒産に至った企業の悲哀

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 最近、知人が関わっていたある会社組織が崩壊した。メンバーは10人にも満たない小さな組織で、当初は皆仲良くやっていた。お互いの気心も知れているはずの組織だった。

 だが、個人的な確執がきっかけで、社長と専務が対立するようになった。この会社では、社長が対外的な宣伝や交渉事を行い、専務以下の社員は会社で業務を行うという役割分担があった。社長も普段は、常に一般社員との交流を図っていたのだが、専務との確執があって以来、専務は自分の部下を含む一般社員に、社長の「悪口」を吹きこみ、自分の味方につけてしまった。

 多勢に無勢となってしまい、社長は退任することを決意。専務以下のメンバーは、自分たちで会社運営を続行するつもりだった。

 特に専務の旗頭となった経理責任者の社員は、「社長がいなくても我々はやっていけるんですよ。社長は疲れ過ぎて、業務運営もまともにはできないでしょう。ここは我々に任せてください」と、やさしい口調で社長を追い出そうとしていた。その社員は、社長が対外的に会社の「顔」として、メディアなどから取材を受けるのを妬んでいたらしい。

 だが、社長はわかっていた。自分が退いたら会社は倒産することを。

 社長退任が決定し、それまでお世話になった顧客の方々にその旨を伝えた途端、同社には契約解消の報が続々と舞い込んだ。これだけ小さな会社ならば、社長はほぼ営業も兼ねている。顧客と直に接し、現場の意見を吸い上げ、よりよいサービス提供のために奔走するのは社長なのだ。専務以下の社員にはそのノウハウがない。

 取引先はみるみる減っていった。新規顧客開拓のノウハウも持たない専務以下の社員たちは、右往左往するばかり。結局、社長の予測通り、倒産するしかなくなったのだった。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

⇒バックナンバー一覧