中学受験の成否を大きく左右する塾選び。保護者は受験の現実を直視すると同時に、周りに流されず、塾の特徴と子供の性格・実力を合わせて考え、最適な塾を見つけ出す必要がある。塾の合格実績を学校別の実数と難度別比率で比較した。夏期講習の機会を活用して、各塾の特徴を検証したい。

  子供に、開成や桜蔭などの有名私立中学を受験させようと考える保護者はまず、それらの学校の過去の入試問題を見た方が良い。とても難しいことが一目瞭然だろう。

 この難問を短い試験時間内に正答するには、たいていの子供の場合、中学受験の専門塾に通い、問題の解法を学ぶ必要がある。これが中学受験の現状だ。

 この点を認識したら、次に必要なことは、塾選びだ。

 毎年2月下旬ごろになると、「今年の合格者 開成90人、桜蔭50人……」とそれぞれの塾の合格実績を誇る数値が新聞広告や広告チラシなどに掲載される。 

 わが子の志望校への合格実績が多い塾が、通うべき塾の候補になるが、これらを横並びで比較した媒体などはほとんどない。そこで筆者は10年以上前から、各塾の広告チラシやウェブサイトを調べて、学校別に合格者数を集計して書籍などで発表を続けてきた。今年の首都圏の主な塾の最難関校~上位校の合格者の発表数を一覧表にした。本稿では、「最難関校」について掲載した(難関校や上位校については、現在発売中の「ダイヤモンドセレクト2015年8月号 中高一貫校・高校ランキング」をご参照ください)。

*各塾のウェブサイト等のデータを基に独自調査。空欄でも合格者がいる場合がある。難関校や上位校については、現在発売中の「ダイヤモンドセレクト2015年8月号 中高一貫校・高校ランキング」をご参照ください

 まず気が付くのは、筑波大駒場や開成など最難関校では、主な塾の合格者数を合計すると、学校が発表している実際の合格者数を上回っていることだ。1人の合格者が2つ以上の塾に通ったりしてダブルカウントされているからだろう。実際、これらの学校の生徒は入学前から塾で「同級生」というくらいに、少数の塾が最難関校の合格者を寡占しているのだ。

 最難関校に合格するには、有力な塾に通うことがその確率を高めるという結果になっている。

 次に、塾ごとの合格者数を比較してみよう。最難関校についてはSAPIX(サピックス)の合格者数が圧倒的に多い。

 ただし、ここで短絡的に、自分の子供もSAPIXに通わせるのがベストだと考えてはいけない。

 確かに、最難関校を第1志望群として、それに見合う学力がある子供の場合、そうした学校の合格者数が多い塾に通う方が、合格に近づくだろう。

 しかし、そうでない子供は、他の塾を選んだ方が適切かもしれない。難度で見て二つ下の上位校クラスの中学を志望し、それに合う学力の生徒の場合は、相対的にその学校への合格実績が高い塾の方が合うことはままある。

 入試難度で見て、塾ごとに得意・不得意や、注力学校とそうでもない学校があるのだ。