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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

「預けたお金の行き先」に関心なき日本人。
預金者の「意思」を示す、「銀行選び」の重要性

――「郵政見直し問題」で考える、意思なき日本人の投資行動

見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]
【第14回】 2010年4月6日
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 ゆうちょ銀行への預入限度額を現行の1000万円から2000万円に引き上げるという「郵政事業見直し案」についての議論がどうも腹に落ちません。その理由は、閣内不一致の話題や、鳩山首相の言動不一致、さらには首相のリーダーシップの欠如などの周辺議論が活発である一方、なぜこうした見直しが必要なのか、預入限度額の算定根拠は何か、などという本質的な議論が見えてこないからなのだと思います。

 「経営環境が厳しくなっている郵便事業を、拡大が見込める金融業務で補完し、郵便・貯金の全国一律サービスを維持する」というのが、メインシナリオだと思うのですが、リーマンショック以降、既存の民間金融機関ですら厳しい業務環境が続く中、金融業務の拡大はそう簡単なものではありません。

 また、郵便事業が厳しくなっていることは、インターネットなどの情報ネットワークの発展や、携帯電話などコミュニケーションツールの変化、更には民間宅配業者など競合他社の事業の拡大など、ライフスタイルの変化が大きく影響しているからではないでしょうか。

 こうした点を踏まえると、いま郵便事業に必要なのは、「資金」よりも、「戦略(意思)」だと思うのです。

 ゆうちょ銀行の預入限度額の引き上げについては、地方の中小金融機関からの預金流出が懸念されています。鳩山首相は、ゆうちょ銀行への資金集中が起これば預入限度額を見直すことも示唆していますが、そもそもそうしたリスクを熟慮、検証したうえで、預入限度額は決められるべき話であり、この発言には場当たり的な印象がぬぐえません。

 私たちが普段何気なく預けているお金ですが、郵政事業見直しの議論の中、ゆうちょ銀行へ預けられた預金の約8割が日本国債で運用されている、ということを初めて知った人も多かったのではないでしょうか。

 預金者自身が、「自分の預けたお金の行く先(何に使われているのか)までを考え、預入先を決める」という“預金行動”を考えるきっかけになるのであれば、今回の郵政事業見直しの議論は、地方・地域に根ざす中小金融機関にとっても、地域の預金者(=住民)にとっても、自立経済システムを構築するチャンスかもしれません。

グラミン銀行に学ぶ、
地域支援の本質

 先日、私は大学の研究プロジェクトでバングラデシュに行ってきました。アジア最貧国とのイメージがある同国ですが、実際に訪れてみると街中に若者と車が溢れ、活気に満ちていました。一方、こうした華やかな光景とは対照的に、スラム街の厳しい生活状況も随所に垣間見ることもできました。

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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

1967年生まれ、埼玉県出身。90年立教大学法学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。05年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA)。同年10月に三井住友銀行を退職し、Mr.Childrenの桜井和寿等が設立したNPOバンク(ap bank)に理事として参画。09年2月に株式会社フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、代表取締役に就任。企業や金融機関に対する戦略・企画コンサルティングを行う。専門は、循環型(環境)ビジネス、ソーシャルビジネス、BOPビジネス及びファイナンス。立教大学AIIC「立教グラミン・クリエイティブラボ」副所長。多摩大学経営情報学部非常勤講師。
☆ご意見・お問合わせはこちら  ☆Twitterアカウント:ken_miyama


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ちまたにあふれる環境ニュースやキーワードの数々。近年のエコブームで「地球にやさしい」というところで思考停止してしまい、その本質を理解できていない人は意外と多い。当連載では、国やメディアに先導されたままの環境キーワードを取り上げ、「論理」と「感性」の両方を満たす、真の環境リテラシーについて考える。

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