原発反対と安保反対の趣旨は同じ

広瀬 私も、そうした裏を調べることに生涯をかけてきましたが、日本の報道界は、ほとんどふれようともしません。
 ところが現実には、核を軸とした世界秩序が、20世紀後半から再び絶対的な権威になっています。核兵器による秩序がほころびないようにすることが、大国の覇権維持派の最大の目標になっています。もともと、できないはずの核絶滅戦争を表に出して、米ソが脅威を煽ってきたのが東西冷戦ですからね。

秋山 「日本の軍備を充実させろ」と言う人間たちが狙っている国家体制は、タイに近いんじゃないかと思っています。自衛隊=軍隊の権威を高めて、政治的な混乱に乗じて軍隊が出てきて、民主的システムを破壊していくというやり方です。そのあたりに、今の僕は、すごい危機感を持っています。

広瀬 確かに、自由と民主主義という言葉が、どんどん踏みにじられています。今回の安保法制反対デモでは、かなりの人が冤罪で拘束されましたが、ほとんど報道もされません。日本にジャーナリズムがあるのか、と言いたいです。

秋山 そう。これをどうストップさせるかは、原発を稼働させないことと同じ構造の中にある問題です。発端は、秘密保護法ですね。原発によって維持される世界秩序を歯止めにすることと、日本が不自由な社会になっていくことを阻止することは、まったく同じことだと僕は思っています。

広瀬 そう、安保・集団的自衛権反対と原発再稼働反対は同じ運動です。

秋山 川内原発が再稼働に動き出したことは残念だったけど、2年も使わないでいた原発は、本当に稼働しますか。あれはうまくいかないでしょう?

広瀬 いくわけないです。大事故に向かって突進しています。本連載第13回の堀潤さんとの「9300億円の訴訟を起こされた三菱重工!! 日米原発報道での一番の違いとは?」や、第17回の田中三彦さんとの「安倍晋三の『世界で最も厳しい基準』は、まっ赤なウソだった!」で説明しましたが、今や、あの小泉純一郎さんも本気で怒っています

 でも、知性ゼロの安倍晋三は、それでもやるからおそろしい人間だ。あの男は完全に狂っています。このあと伊方原発が再稼働したら本当に危ない。だから、11月1日には「STOP伊方原発再稼働!11・1全国集会in松山―福島をくり返さない―」が行われます。

秋山 そう。反対し続けましょう!
 僕も11月に、福井県の高浜から小浜を通って大阪まで、1日20~30キロ、2週間かけて200キロくらいの行進をやろうという計画があります。これに参加するつもりです。
 原発銀座といわれる若狭湾と、京都市の距離は60~70キロ。もし、事故が起きれば、京都市内には大量の放射性物質が降り注ぎます。また被曝させられるなんて、冗談じゃない。
 安保反対運動も、安保法案が通った「9月19日」にちなんで、「戦争をさせない左京1000人委員会」は毎月19日に必ず街頭行動をやると決めました
 僕もここ半年くらいはデモばっかりで、これが本当の「デモ暮らしー」だと思っています。

広瀬 「デモ暮らしー」! いい人生だ! お互いに、がんばりましょう。われわれもこのままじゃ死ねない!

原発再稼働と安保法強行の裏に、<br />何がひそんでいるのか?<br />――秋山豊寛×広瀬隆対談【後篇】


(おわり)