前回のこの連載で、日本銀行が進めているインフレターゲットとそのエンジンである量的金融緩和などの金融政策が転換する兆しについて書きました。特に、「新アベノミクス」では、「インフレ(物価上昇)」から「景気」に重点が変更になっています。麻生財務相の「金融(政策)でできる範囲は限られてくる」等の発言からも、その転換が伺われます。
10月30日に開催された日本銀行の金融政策決定会合と事前のレポートでは、インフレ率の低下と目標達成時期が先に延びたこと等が報告されました。いままであったら、追加緩和など何らかの手を打ったところです。世界のマスコミも日銀が何もしなかったことを疑問視しています。
量的金融緩和を止めて正常な金融市場に戻すことを出口戦略と言います。米国では「正常化」と呼ばれています。具体的には、今、非常時の政策として、国債を年に80兆円購入し、同額の資金供給を行っていますが、それを縮小して最終的には止めて、金利が存在する金融市場に戻ることです。
出口戦略は、まだ発表されていません。しかし、筆者は単純な経済政策の転換ではなく、日本経済にとってこの量的金融緩和が限界に来ており、実際に出口戦略がスタートしている、と考えています。このように考えると、今後、追加金融緩和の可能性は低いと言わざるを得ません。
日本国債の格付け低下がもたらす
日本企業への悪影響
9月16日、米国の格付け会社S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)が日本国債(長期)の格付けを「シングルAプラス」に引き下げました。S&Pが日本国債を史上最低のシングルA格にするのは初めてです。
S&Pは先進国で最悪の水準にある日本の財政赤字について「重大な弱み」と強調し、「アベノミクス」の効果が見込めないことを格下げの理由にあげました。日本の政府総債務残高(対GDP比)を見ると、ダントツの約250%の債務比率になります。2位は約170%のギリシャでかなりの差を付けて、1位となっています。ちなみにドイツや中国は約80%です。