まずは現状のリサーチから始めよう!
深刻化する「タダ乗り問題」の解決法
前回は、「タダ乗り」という現象が今の日本の会社組織に深刻な問題を引き起こしていることを述べた。お蔭様で、記事の反響は私たちの予想をはるかに上回った。新連載としては異例の35万PV(ページ・ビュー)を記録し、読者の皆様からのメールも多数いただいた。
これだけ大きな反響を呼んだのは、まさに日本の多くの職場で「タダ乗り問題」が発生しており、皆がそれに不満を感じているからに他ならないだろう。そして、この問題が会社の存続を左右するほど深刻になってきていることの表れでもあるだろう。
ならば、「タダ乗り問題」は企業にとって早急に解決されるべき課題である。前回の記事を読んで危機感を感じた経営者や管理職は、自分の会社や部署のタダ乗り問題に対してすぐに手を打つ必要がある。
しかし、タダ乗り問題は私たちが考えるほど簡単に解決できるものではない。それは、これまでの社会科学の研究からも、私たちが企業関係者に対して行なったインタビューからも、わかっている。
問題の解決のためには、まず「なぜタダ乗り問題が起こるのか」「職場にはどんなタダ乗り社員がいるのか」を知らなくてはならない。今回は、タダ乗り問題を解決するために必要な予備知識として、社会心理学を中心とした研究成果をわかりやすく解説したい。
結論から言うならば、あらゆる会社組織は放っておくとタダ乗り問題を生む構造になっている。いや、会社組織だけではなく、皆で協力し合うことが必要な全ての集団――国、地域社会、家庭、そして地球全体――は、タダ乗り問題を潜在的に抱えている。
わかりやすい例として、教育現場で起こりがちなケースを挙げてみよう。
教室の掃除をクラス全員でやることを考える。これを経済学的な視点から見ると、それぞれの生徒はコストを負って掃除を行なうことになる。それは、掃除のために使う時間や肉体的・心理的な負担がコストとみなされるからだ。