読書は「測量」よりも「宝探し」に似ている

「たった1つの文」に読書の神は宿る◎あなたの積ん読も、これで解消!!
『遅読家のための読書術』(印南敦史・著)

「価値ある1行」を意識しながら読むことには、読書に対するネガティブな感情をかき消す効果もあります。

読書を「面倒くさい」とか「苦痛だ」と考えるのは、「そこに書かれている文字列をすべて目で追い、かつ、内容を咀嚼しなければ『読んだ』とはいえない」という思い込みがあるからです。読書が作業になってしまっているということだと思います。

しかし、「1行」を探しながら読むようにすると、そこには冒険しかありません

もしもみなさんが無人島に隠された宝を探すトレジャーハンターだったとして、その島のすべての座標をわざわざすべて踏みしめていったりするでしょうか?

そんなムダなことはしないと思います。
きっと、いろんな手がかりを駆使しながら、なるべく最短に近いルートを通って宝にたどり着こうとするはずです。もちろん、宝を発見するまでのプロセスも楽しみの一部ですから、苦痛だという思いをすることもありません。

いずれにしても、読書で大切なのは、その本の内容もさることながら、読書という行動のどこかにささやかな楽しみを見つけることなのです。

「本を開くことは楽しい」という感覚をまず身につけられれば、そこから遅読の状態を抜け出すための可能性が広がっていきます。

(第14回に続く 3/11公開予定)

印南敦史(いんなみ・あつし)
書評家、フリーランスライター、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役
1962年東京生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。
「1ページ5分」の超・遅読家だったにもかかわらず、ビジネスパーソンに人気のウェブ媒体「LifeHacker[日本版]」で書評欄を担当することになって以来、大量の本をすばやく読む方法を発見。
その後、ほかのウェブ媒体「NewsWeek日本版」「Suzie」「WANI BOOKOUT」などでも書評欄を担当することになり、年間700冊以上という驚異的な読書量を誇る。
著書に『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)のほか、音楽関連の著書が多数。