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絶滅危惧種なお仕事ガイド

市場規模5分の1に縮小のキモノ業界!
ジリ貧でも「和裁」がしぶとく生き残る理由

曲沼美恵 [ライター]
【第1回】 2010年7月8日
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 新しいキモノファッション誌もある。ベンチャー企業の社長が、着付けを習ったり、お茶を習ったりしている。ちょっとした、「和」ブームである。

 「それが、業界的には厳しい状況が続いているのです」

 日本和裁士会が発行する「日本和裁新聞」編集部の宮下政宏さんが、残念そうに言う。

 1954年に創設された日本和裁士会の会員は20年前には約6000人を数えたが、現在は約1700人しかいない。減ってしまった理由はつまるところ、儲からないからだ。

 和裁のシゴトは、今や半分以上が中国やベトナムへ流れてしまう。ただでさえ少ないパイを海外と取り合わねばならないうえ、加工料の値下げ要求も強くなる。「これではやっていけない」と、廃業する和裁所も多い。次代のプロを養成する和裁学校の閉鎖・縮小も相次ぐこのおシゴトは、本連載のテーマ、「絶滅危惧種」の1つである。

 実を言えば、キモノの市場規模は1982年まで拡大していた。キモノを着る人がほとんどいなくても、売上だけは伸びていたのである。

 「なぜかと言えば、1枚あたりの単価が高くなっていったから。普段着としてのキモノが売れなくなると、小売がこぞって、婚礼や成人式、七五三などで着る高価な晴れ着を売ることに力を注ぐようになったからです」(宮下さん)

 「ケ」(普段着)は消え、「ハレ」(晴れ着)だけが残った。だが、膨張しすぎた「ハレ」は度重なるバブルとともに消え去り、キモノ業界は存亡の危機を迎えている。

 経済産業省の「商業統計」と総務省の「家計調査」、それに矢野経済研究所が出している「呉服市場に関する調査結果」などを総合すると、現在のキモノの市場規模は約3500億円程度、と言われている。ピーク時の約5分の1だという。

客の顔が見える「お仕立て処」
お金で買えない“やりがい”も

 JR御徒町駅から歩いて5分、東京・東上野にある「お仕立て処 うえの」を訪ねた。

 「上野にいる上野さんってのが、おもしろいことをやっているよ」と、宮下さんに教えていただいた。

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曲沼美恵[ライター]

1970年生まれ。大学卒業後、日本経済新聞社に入社。2002年からフリーに。近年はビジネス誌やウェブサイトで、ルポルタージュやインタビュー、コラム等を執筆。近著に『メディア・モンスター:誰が黒川紀章を殺したのか?』(草思社)がある。仕事に関する情報はブログでも紹介中。「ニュース」より「人」に興味あり。

 


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「もう食えないかも」「このままだと絶滅」と言われる産業に従事する人々のなかにも、実は意外にしぶとく生きている人たちがいる。日本一でもなく、世界一でもない、「最後の下駄屋になること」を目指して働く職業や人々を追いかけ、「崖っぷちの中に見える希望」を探る。

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