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日本に巣食う「学歴病」の正体

有名美大卒クリエイターに学ぶ、
学歴が通用しない世界の生き残り哲学(下)

ザリガニワークス代表取締役・坂本嘉種氏、武笠太郎氏に聞く

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第8回】 2016年3月1日
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>>(上)より続く

 「厳しい世界に長くいると、学歴とか“目には見えない学力”云々は取るに足らないものであることを、嫌というほどに経験します。 僕らがいるのは『そんなこともよりも、まずは実力でしょう?』という考えが徹底している世界ですから、目に見える形で結果を残さないと、話にならないのです。大切なことは、その作品をつくった時点での実力です。いかに学歴が立派であろうとも、すがるものでもないし、あがめるものでもないのです」(坂本さん)

 武笠さんも、同じようなことを答える。

 「僕も、他の方の作品を観るとき、学歴を知ったとしても嫉妬することはないし、優越感も感じません。作品には嫉妬することがあるかもしれませんが。『あっ! これは面白い! やられたな……』と。やはり、大切なことは結果ですね」

 結果こそが問われる世界で生き抜く人たちにとって、“目には見えない学力”は説得力のないものに映るのかもしれない。

「なぜ……? あんなやつが受かって
おれが落ちるなんて、なぜ……?」

 会社員や学生の中には、“偏差値”の力を妄信している人もいる。筆者は10年ほど前、全国紙や通信社の記者職などを目指す学生を相手に、採用試験で課せられる「論作文」の書き方を専門学校で教えていた。全国紙や通信社の採用試験は、倍率が激しく、問題の難易度も高い。その学校には1年で数百人の学生が集うが、正規のルートからは数人しか採用試験に受からない。受講する学生は、大学別で言えば早稲田が多かった。全学生の7割を占めていたと思う。

 その多くが全国紙や通信社の試験に落ちて、出版社や広告代理店、メーカー、金融機関、大学院などに進む。これは、倍率という点から見て仕方がないことである。特に10年ほど前の、一部の全国紙・通信社の記者職は、倍率が極端に高かった。一方で、早稲田よりも偏差値がずっと低い大学の学生が、全国紙の記者職の試験に、まれに受かることがある。配点が高い「論作文」で、210点満点中190点以上をとる学生であり、縁故採用ではない。このレベルは、数百人の学生の中で数人しかいない。学生と思えないほどに、きわめて、優れ者なのだ。

 こうした学生を、全国紙以外の会社に進む、「不本意入社」の学生たちがいじめることがある。嫉妬心なのだろうか、口もきかなくなるし、飲み会にも誘わない。筆者が感じていた限りでは、その学生たちはこんなことを言いたかったのだろう。

 「なぜ……? あんなやつが全国紙に入り、俺がメーカー? なぜ……?」

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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