既存店を改装、「イオンスタイル」と名付けた店舗展開を進めるイオン。売り上げが増加するなど効果は出ているというが、業績を回復させるまでには至っていない Photo by Yasuhisa Tajima

 流通大手のイオンは2月12日、2016年2月期の連結最終利益の予想を、それまでの425億円から50億円へと下方修正した。

 前期比88%減という大幅な引き下げだが、それさえも「“お化粧”して、強引に作った決算なのでは」との見方が市場関係者の間で広がっている。

 きっかけは、下方修正から11日後の23日に、イオンと子会社のダイエーとが発表した3枚のプレスリリースだった。これらのリリースが意味することは何なのか。テクニカルになるが簡単に説明する。

 まず、退職金や年金を支払うための積立金が不足していたダイエーは、その解消を目的とし、240億円を拠出して年金基金を設立。この基金に対しイオンは、保有していたクスリのアオキ株などを売却し、188億円の売却益を得た。

 一方、イオンの100%子会社であるイオンリテールは、年金資産の積み立てが退職給付債務を上回っていたため、超過分の277億円を解約。イオンは、前払い年金費用を差し引いた136億円を返還益として得た。

 その結果イオンは、連結ベースで見ると、税金の支払いなどを考慮しない単純計算で324億円もの特別利益を手にしたことになるのだ。

 つまり、この特別利益がなかりせば、274億円の最終赤字に転落していた可能性が高く、「最終黒字にするために考え出した、苦肉の策だったのではないか。まさに薄氷の決算といえる」(流通関係者)との見方がもっぱらだ。