ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
日本を元気にする経営学教室

日本の工場を元気にする
「ムダ」を見つけるための視点とは
慶應義塾大学ビジネス・スクール校長 河野 宏和

遠藤 功 [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],河野宏和 [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]
【第8回】 2010年8月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 日本のインフラコストは高い。だから日本に工場を置くなど時代遅れ、海外に生産拠点をシフトすることが、当然の流れのように言われている。中国の人件費が上昇してくれば、次はベトナム、あるいは中国奥地、いやいやロシアだ、ブラジルだ、もっと安い国はどこだろうか……といった議論になるのは、マクロな経済動向を考えれば、的外れではないかもしれない。

 しかし、こうした議論を続けるだけで、果たして我々は元気になれるのだろうか? 日本において、まだできること、やるべきことがあるのではないだろうか? 今回は、日本の生産拠点が元気になるために、「ムダ」に着目する視点について、改めて考えてみたい。

最新鋭の工場にて
高度な自動化にも「ムダ」あり

 昨年末、ある製薬企業の新鋭工場を見学する機会に恵まれた。高度な自動化がセールスポイントになっている。

 原材料の一つは密封された容器で、6本ずつ段ボールに梱包されて納入されている。納入口のパレットに平置きされた段ボールは、巧みに動くロボットアームにつかまれて、高さ1メートル程のコンベア上に天地逆向きにして移される。段ボールはコンベア上を移動し、途中で上部に横から刃が当たり、底蓋がカットされる。

 そこへ別のロボットアームが伸びてきて、カットされた底蓋部分を押さえ、同時に両側面を吸引して見事に段ボールを上下180度回転させる。次に、そのロボットが底蓋以外の段ボール(側面と上面)を吸引して取り除くと、ようやく段ボールから資材の入った容器が顔を見せる。

 ここまでで多関節のロボットが2台使われている。さらに、資材の投入口は5メートル以上の高さにある。これまた別のロボットのアームが伸びてきて、容器2本を同時につかんで投入口へ持ち上げ、キャップを外して投入する。そのロボットは、戻るときは何も運ぶことなく、高さ1メートルのコンベアまで戻ってくる。1つのラインに3台の多関節ロボットが使われている。投入口が3ヵ所あるから、合計9台のロボットが動き回る先進的な資材投入工程である。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

遠藤 功(えんどう いさお) [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長]

1956年生れ。79年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。その後、米系戦略コンサルティング会社を経て、2008年から早稲田大学ビジネススクールのMBA/MOTプログラムディレクターとして、ビジネススクールの運営を統轄。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。『MBAオペレーション戦略』『現場力を鍛える』『見える化』など著書多数。

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

河野 宏和(こうの ひろかず) [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]

1980年慶應義塾大学工学部卒業、82年同大学院工学研究科修士課程、87年博士課程修了、同年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、91年工学博士、91年助教授、98年教授となる。2009年10月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。1991年7月より1年間、ハーバード大学ビジネス・スクールヘ留学。IEレビュー誌編集委員長、TPM優秀賞審査委員、日本経営工学会理事。


日本を元気にする経営学教室

国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入。にもかかわらず、日本企業には閉塞感が漂う。この閉塞感を突破するにはどうしたらよいのか。著名ビジネススクールの校長・元校長で、経営学のリーダーたちが、リレー形式で、問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

「日本を元気にする経営学教室」

⇒バックナンバー一覧