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アイリスオーヤマ社長 大山健太郎

「働く社員にとって良い会社」とは「社員を正しく評価する会社」だ

大山健太郎 [アイリスオーヤマ社長]
【第3回】 2016年4月18日
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Photo by Yoshihisa Wada

下請けは元受けのリスクを被せられている

 アイリスオーヤマの経営は、5項目からなる「企業理念」にすべてが集約されている。それは経営企画室がまとめ上げたようなものではなく、私自身の経営者としての経験から紡がれたものだ。

 「1.会社の目的は永遠に存続すること。いかなる時代環境に於いても利益を出せる仕組みを確立すること」「2.健全な成長を続けることにより社会貢献し、利益の還元と循環を図る」「3.働く社員にとって良い会社を目指し、会社が良くなると社員が良くなり、社員が良くなると会社が良くなる仕組みづくり」「4.顧客の創造なくして企業の発展はない。生活提案型企業としての市場を創造する」「5.常に高い志を持ち、常に未完成であることを認識し、革新成長する生命力に満ちた組織体をつくる」だ。

 父の急逝で19歳で社長になった私は、自分には営業力も経営力もないのを誰よりも承知しており、自分の強みは「若さしかない」と腹を括った。具体的には、どんな仕事でも絶対に引き受けることだった。声が掛かれば「イエス」で、儲からない仕事も「イエス」。儲からない仕事は、社員が帰った後に自分一人でこなした。

 簡単に言えば、「損して得を取れ」である。注文をする方にとっては、これほど使い勝手のよい下請けはない。儲からない仕事ならば自分の体をすり減らせばよいだけだ。それで信用ができると、放っておいても仕事は来る。儲からない仕事を断るのは、自力を付けてからでいいと思っていた。

 しかし2年ほどして、「これでは、食うことには困らないだろうが、俺の人生はこのままでいいのか」と思い始めていた。下請けの最大の課題かつ弱点が、値段の決定権がないことだ。これは今でもそうだ。半年に一度、納入価格の引き下げを求められる下請け企業がごまんとある。

 納入価格の引き下げが、小売価格の値下げになり生活者の利益になっているのであれば納得もできる。だが実態は、発注元の利益を確保するために納入価格を引き下げさせている。彼らは、収益リスクを下請けに負わせているだけなのである。

 私は、ビジネスはいつも対等だと考えていた。注文をもらうために頭を下げるものの内心では納得はしていなかった。そこで22歳で、自分の製品は自分で値決めできるメーカーに転じた。

 漁業用の浮ブイや田植え機用の育苗箱で基盤をつくれたが、それは1973年以降の第4次中東戦争景気の反動で壮絶な値崩れに直面した。10年かけて貯めたお金は2年で底をついた。

 良好な関係を築けていると信じていた問屋は、手のひらを返して値切りや取引中止を求めてきた。流通業者の意向次第で、汗水垂らして築いた商圏が一夜にして消失する経験を味わった。東大阪の工場を閉めて仙台に会社を移し、家族とも言える多くの社員に辞めてもらわなければならなかった。

 恨み言を言うのではない。誰もが必死だった。しかし、「自分はそうはしない」。私が、そう決めただけのことである。

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大山健太郎 [アイリスオーヤマ社長]

1945年(昭和20年)大阪府生まれ、64年大阪府立布施高校卒業。同年、ガンで倒れた父親の後を継ぎ、プラスチック成型加工の大山ブロー工業所(現アイリスオーヤマ)代表に就任。71年株式会社化し、翌年宮城・大河原工場を建設。石油ショック後の経営危機を経て、81年消費財分野に進出、ホームセンター向けプラスチク製品のトップメーカーに育てた。地元、宮城では実践的な経営理論の論客として知られる。


アイリスオーヤマ社長 大山健太郎

爆発的ヒットとなった「クリア収納ケース」をはじめ、生活を便利にする商品を次々と生み出しているアイリスオーヤマには二つの大きな信念がある。「常識にとらわれないイノベーション」と「ユーザーインのものづくり」だ。総アイテム数1万6000点、毎年1000点の新商品開発を実現する開発力はどのようにして創造されているのか。またそれを支える大山健太郎社長の経営戦略、基本哲学とはどのようなものか。

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